研究実績の概要 |
マウスエラスターゼ誘導肺気腫モデルを用いて、肺気腫の進展にIL-23/Th17が重要な役割を担っていることを本研究で明らかにした。まずはIL-23欠損マウスと野生型マウスでエラスターゼ誘導肺気腫を作成し、肺気腫の進展の程度を比較検討したところ、IL-23欠損マウスは、エラスターゼ投与し、気腫性変化を惹起させた後の静肺コンプライアンスが野生型マウスにくらべて低値を示し、肺組織で評価した平均肺胞間距離も減弱し、エラスターゼ誘導の気腫性変化は野生型マウスに比して、有意に軽度であった。 さらに、Il-23欠損マウスは、エラスターゼ投与後の、肺内のTh17関連サイトカインであるIL-17Aの値も野生型マウスに比べて低値を示した。KC,MIP-2などの好中球関連ケモカイン値もIL-23欠損マウスでは野生型マウスに比して、有意に低値を示した。またエラスターゼ投与後早期の気管支肺胞洗浄液中の好中球数は、IL-23欠損マウスにおいて、野生型マウスよりも低値を示し、好中性気道炎症およびその後に進展する肺気腫の進展にIL-23、そしてIL-23が誘導するIL-17Aが必須であることが示唆された。 次に野生型マウスにエラスターゼ誘導肺気腫を作成し、エラスターゼ投与前に抗IL-23抗体を投与し、IL-23の抑制を行ったところ、エラスターゼ誘導肺気腫進展を抑制することができた。さらに、エラスターゼ投与1週間後の既に肺気腫が進展しつつある時期に抗IL-23抗体を投与し、肺気腫の進展を抑制するかどうかを検討したところ、抗IL-23抗体による肺気腫進展抑制効果が得られた。したがって、エラスターゼ投与後の好中球性気道炎症およびその後に進展する肺気腫の進展にIL-23、そしてIL-23が誘導するIL-17Aが必須であることが示唆され、IL-23を抑制することが新たな肺気腫の治療となりうることが示唆された。
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