研究実績の概要 |
平成28年度までの本研究で、C57BL6野生型マウスに合成2本鎖RNAを気管内投与することでウィルス感染モデルを作成し、B7-H1/PD-L1の発現動態を検討した。当初のモデルではkeratin陽性細胞を対象としたB7-H1/PD-L1の発現動態を検討したが、keratin陽性細胞が主たる解析対象である上皮細胞系のみならず、一部の炎症細胞にもみられ、また活性化した炎症細胞で自己発光がみられるなど疑陽性反応が混在する可能性が示唆された(Hamano et al. J Inflamm, 2017に誌上発表)。そこで、発展型モデルとして蛍光標識EpCAM抗体、抗CD11b抗体、抗CD45抗体を組み合わせて自己発光細胞を除去し、さらにFSC, SSCのパネル上の分布パターンを参考にゲートすることとし、上皮細胞系、顆粒球系、マクロファージ・単球系、リンパ球系に選別標識することに成功した。このモデルを用いて各細胞系におけるB7-H1/PD-L1の発現動態を測定し、in vitroの実験系において気道上皮細胞上のB7-H1/PD-L1の発現を抑制する効果を持つことを確認しているPI3キナーゼdelta阻害薬の効果がin vivoでもみられるかを検証した。合成2本鎖RNAを気管内投与すると上皮細胞系、顆粒球系、マクロファージ・単球系でB7-H1/PD-L1の発現が増強し、PI3キナーゼdelta阻害薬の気管内投与はこれを抑制した。現在論文準備中である。複合病態モデルも予定中。 また、培養ヒト気道上皮細胞株BEAS-2Bを合成2本鎖RNAで刺激してB7-H1/PD-L1の発現を誘導するin vitroモデルではIL-22投与がB7-H1/PD-L1の発現誘導を用量依存性に抑制し、その抑制作用はSTAT3を介することを明らかにした(Seki et al. BBRC, 2017に誌上発表)。
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