研究課題/領域番号 |
15K09223
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
角川 智之 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (90570953)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | HSP47 / 肺線維症 / siRNA |
研究実績の概要 |
HSP47はコラーゲン合成に必要不可欠な蛋白質であるため、HSP47を抑制することにより細胞内でのコラーゲン合成を阻害し、線維化の進行を抑制することができると考えられる。従って、HSP47はこれまで有効な治療法がなかった難治性肺線維化疾患の新たな分子標的治療のターゲットとなるとの着想に至った。更に、本研究協力者(Ananthanarayanan教授、McMaster University)らは、約2000種類の化合物をスクリーニングし、4種類のHSP47 inhibitorを見いだした(Christy A. et al. J. Med. Chem. 2005)。このHSP47 inhibitorはHSP47蛋白の発現自体は抑制しないが、HSP47のシャペロン機能のみを特異的に抑制し、細胞内でのコラーゲン合成を抑制できる。本研究ではsiRNAだけでなく、このHSP47 inhibitorも用いることによりHSP47制御を行うことを目的として研究を進めている。 まずin vitroにおけるHSP47 inhibitorの効果を検証した。正常ヒト成人肺線維芽細胞を用いて、TGF-β1およびHSP47 inhibitorによる、HSP47遺伝子発現およびHSP47タンパク質産生量に対する効果を解析した。その結果、TGF-β1はHSP47遺伝子の発現を顕著に促進すること、そして、HSP47 inhibitorはHSP47遺伝子発現を顕著に抑制することが示された。さらに、タンパク質レベルでも、TGF-β1はHSP47タンパク質の産生を促進し、HSP47 inhibitorは顕著に抑制することが示された。 さらに、現在ブレオマイシン肺線維症モデルにHSP47 inhibitorを投与しin vivoでの抗線維化効果を確認する実験に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、まずin vitroにおけるHSP47 inhibitorの効果を検証した。正常ヒト成人肺線維芽細胞(normal human lung fibroblasts:NHLF)を用いて、TGF-β1およびHSP47 inhibitorによる、HSP47遺伝子発現およびHSP47タンパク質産生量に対する効果を解析した。その結果、TGF-β1はHSP47遺伝子の発現を顕著に促進すること、そして、HSP47 inhibitorはHSP47遺伝子発現を顕著に抑制することが示された。さらに、タンパク質レベルでも、TGF-β1はHSP47タンパク質の産生を促進し、HSP47 inhibitorは顕著に抑制することが示された。さらに、ブレオマイシン肺線維症モデルにHSP47 inhibitorを投与しin vivoでの抗線維化効果を確認する実験に進んでいる。現段階でHSP47 inhibitorを投与することにより、ブレオマイシン肺線維症モデルマウスの生存率を改善させ、体重減少も抑制することが見いだされている。現在、肺組織内の病理学的な評価やHSP47やコラーゲン、線維化に関与する各種メディエータのmRNAや蛋白レベルでの発現状況について詳細な検討を追加している。 これらの進捗状況は、概ね当初の予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
上記のようなin vitroでの結果をもとに、現在in vivoでの治療実験を開始し、進めている。ブレオマイシン肺線維症モデルマウスを用い、経時的に肺組織中のHSP47発現動態を詳細に解析し、同時に採取した血清中HSP47濃度測定を行うことにより、肺組織中のHSP47発現と血清中HSP47濃度との関連について検討を行う。最終的には血清中HSP47濃度測定を行うことにより肺組織中のHSP47発現動態を把握する方法を確立する。さらに、動物モデルを用い、HSP47 inhibitorを投与することによる線維化病変局所におけるHSP47発現制御法を確立し、線維化進行抑制効果を検討する。ブレオマイシン肺線維症モデルや急性肺損傷モデルに関しては、本研究代表者が既に確立した方法を用いる。さらに、今後はHSP47 siRNAを肺組織に送達させ、in vivoでのHSP47発現制御を行うことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
In vitroの実験は当初予定よりも順調に進んでいるが、in vivoの実験は当初予定よりも若干遅れているため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
今後in vivoの実験を進めるにあたり、動物の購入、飼育、薬剤の投与などを進めるために使用する計画である。
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