研究実績の概要 |
本研究は、ナノ粒子化免疫調節剤の経気道投与による、①原発性肺癌モデルの治療後長期生存解析(平成27~29年度)。並びに、②呼吸器炎症性疾患モデルにの治療効果解析(平成28~29年度)を行った。今回使用したketal-linkageナノマイクロ粒子キャリアーは、中分子の合成核酸(ODN)を包埋することで、通常は経気道投与で速やかに肺外に排除されるODNの肺内定着が向上し、間欠的投与を可能とした(米国特許取得No.9,919,058)。このナノ粒子化免疫調節剤を使用した検討結果を概説する。 ①原発性肺癌モデルの治療後長期生存モデルでは平均8.2個/最大肺冠状断面の残存腫瘍結節を確認した。この残存腫瘍結節の免疫組織学的解析で、CD3(-)Foxp3陽性細胞を多数認め、未治療群にみられるCD3(+) Foxp3陽性細胞との機能上の差異が示唆されたほか、未治療群にみられるPD-1陽性細胞の著明減少が確認され、長期間の抗腫瘍免疫効果が示唆された。実際にナノマイクロ粒子キャリアー包埋Th1刺激性ODNによる治療生存群では、腫瘍細胞の同所再移植後も無治療で100%の長期生存を達成した。これらの検証により、肺癌に対する局所免疫治療の意義を明らかとした。 ②呼吸器炎症性疾患モデルの検証では、Th1/Th2抑制性ODNの経気道投与による治療効果解析過程で、創傷治癒に関与するTLR9の欠損マウスが肺気腫進展と関与する可能性が示唆されたが、実際のヒト肺気腫組織の検証では健常肺組織との比較で有意なTLR9の発現差は確認できなかった。またTLR7の高刺激下で TLR9の発現低下が見出され、ウイルス感染後の2次細菌感染の重症化につながる自然免疫応答が示唆され、Th1抑制性ODNの投与によりTLR9の発現低下が抑制されることが肺気腫モデルの増悪抑制に関係する可能性が考慮された。
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