肺がんを分子生物学的レベルで解明し、さらなる個別化医療を進めるためには、より高感度な検出系を確立し、生物学的特徴および臨床像を解明する必要がある。本申請では、デジタルPCR 法を用いて承認薬剤の標的遺伝子変異を網羅する測定パネルを開発し、変異検出感度と精度の飛躍的な向上を実現することを目標にしている。加えて、低頻度変異アリル存在時の臨床像を解明し、肺がん個別化医療推進につなげることを目指している。 標的となるEGFR遺伝子変異をクローニングしたプラスミドを用いて、複数の遺伝子変異を同時に検出できるデジタルPCRの測定パネルを確立に取り組んだ。具体的には3種類のEGFR遺伝子変異(L858R、Exon19 Deletion、T790M)を同時に検出するパネルの確立に取り組み、検出系を確立した。その上で上記EGFR遺伝子変異測定パネルを用いて患者検体での測定用のための臨床試験を実施した。組織検体での検討を行い検出用のカットオフ値の設定を行い、臨床研究用に利用できることを確認した。加えて、血液検体からの血漿DNAを用いての検討を実施し、組織と同様に検出のためのカットオフ値の設定を行った。これを踏まえて、院内の肺がん症例における検討を実施し、その後に多施設での前向き研究を実施した。具体的には、EGFR阻害剤治療を受けるEGFR変異陽性非小細胞肺がん患者において治療前から増悪までの8ポイントにおいて血液の採取を実施し、本研究において確立したEGFR遺伝子変異検出法にて血液中のEGFR変異の推移を観察した。その結果、EGFR阻害剤治療開始後の4週目までに血液中からEGFR変異陽性アリルが消失しない症例において、有意に無増悪生存期間が短いことが示され、治療開始後の早期において治療効果が予測できることが示唆された。
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