研究課題
平成27年度は、研究計画に基づき、①EGFR、EML4-ALKおよびKRAS変異を有する肺癌細胞株における代謝因子Bの発現及び増殖に与える影響を検討した。また平成28年度の研究計画を前倒しして、②肺癌症例における代謝因子Bの発現についての検討も行った。①EGFR、EML4-ALKおよびKRAS変異を有する肺癌細胞株における代謝因子Bの発現及び増殖に与える影響については、EGFR遺伝子変異を有するPC9では、EGFR-TKIであるgefitinibおよびerlotinibに対するそれぞれの耐性株であるPC9 GRおよびPC9 ERにおいては、いずれも親株に比し代謝因子Bの発現は亢進しており、増殖速度は有意に低下していた。一方同様にEGFR遺伝子変異株であるHCC827においては、gefitinibに対する耐性株であるHCC827 GRでは、親株に比しむしろ代謝因子Bの発現は有意に低下していたが、増殖速度は亢進していた。またEML4-ALK変異を有するH3122においては、ALK阻害剤であるalectinibに対する耐性株であるH3122 ARでは、親株に比し代謝因子Bの発現は有意に亢進し、増殖速度は低下していた。さらにヌードマウスを用いた移植実験において、PC9においては代謝因子Bの高発現により増殖速度が抑制されるものの、KRAS変異陽性のA549においては増殖速度は変化しなかった。以上の結果、代謝因子Bは必ずしも上記の阻害剤により誘導、あるいは耐性化により誘導される訳ではないが、発現亢進により一部の癌遺伝子を発現している腫瘍において増殖を抑制、すなわち癌抑制因子としての機能を有することが示唆された。②肺癌症例における代謝因子Bの発現については、免疫組織学的に、陰性、+1、+2の3段階での評価を行ったが、一部の肺癌症例において、代謝因子Bを高発現していることが明らかとなった。
3: やや遅れている
研究代表者が、平成27年度6月より呼吸器内科から同組織内ではあるものの臨床研究推進センター トランスレーショナルリサーチ(TR)部門教授として異動することになり、さらに同年9月からは同センターの臨床研究支援部門長としても兼務も行うこととなったため、想定外の業務が重なり、当初予定していた研究計画を遂行することが出来なかった。
平成28年度は、臨床研究推進センター 支援部門長としての任務は終了する予定であり、まずは当初平成27年度に予定していた研究計画をしっかり実施する。肺癌症例における代謝因子Bの発現についても、さらに症例を増やし、臨床情報との関連についても検討を加える。また種々の薬剤に対する感受性を予測しうる代謝性バイオマーカーの検索についても実施していく。
研究代表者が、平成27年度6月より呼吸器内科から同組織内ではあるものの臨床研究推進センター トランスレーショナルリサーチ(TR)部門教授として異動することになり、さらに同年9月からは同センターの臨床研究支援部門長としても兼務も行うこととなったため、想定外の業務が重なり、当初予定していた研究計画を遂行することが出来なかった。平成28年度には当該年度の計画に加えて平成27年度に予定していた研究計画を含めて実行する予定であるため。
平成28年度は、まずは当初平成27年度に予定していた研究計画をしっかり実施する。肺癌症例における代謝因子Bの発現についても、さらに症例を増やし、臨床情報との関連についても検討を加える。また種々の薬剤に対する感受性を予測しうる代謝性バイオマーカーの検索についても実施していく。
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