研究実績の概要 |
COPD患者における、LaminB1の発現を免疫組織学的検討と、肺ホモジネートを用いたウエスタンブロット法で評価した。結果COPD肺の気道上皮細胞におけるLamnB1発現低下を認めた。肺ホモジネートによる検討から、LaminB1発現低下と呼吸機能低下との相関を認めた。培養気道上皮細胞を用いた検討から、喫煙刺激により、オートファジーが誘導され、LaminB1が発現は低下し、オートファジー阻害により、LaminB1発現低下が抑制される傾向を認めた。つまり喫煙刺激による核選択的なオートファジー亢進により、LaminB1の発現が低下する可能性があると考えた。LamnB1発現低下が細胞機能に与える影響を、LaminB1ノックダウンにより検討した。LaminB1ノックダウンによりmTORが活性化し、喫煙誘導性オートファジーが抑制された。また、LaminB1ノックダウンにより、DEPTORの発現低下も認め、DEPTORのノックダウンによりmTORが活性化し、オートファジー誘導が抑制される傾向にあった。つまりLaminB1発現低下が、DEPTOR発現抑制によりmTORを活性化し、喫煙刺激によるオートファジー誘導を阻害している可能性が考えられた。6か月の喫煙曝露マウスモデルでは、マウス肺におけるLaminB1の発現低下を認め、p62の発現亢進からは不十分なオートファジー分解が、p21,p-HistoneH2AXの発現亢進から細胞老化の亢進が示唆された。以上検討から、喫煙刺激による核ラミンのオートファジー分解亢進により、LaminB1発現が低下する。LaminB1発現低下によるDEPTOR発現抑制を介し、mTORが活性化し、その後の喫煙によるオートファジー誘導が阻害されることで、不十分なオートファジー分解と細胞老化の亢進というCOPD病態に関与している可能性を示唆する所見である。
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