研究課題
我々の研究課題は、COPD、BA(喘息)、ACOS(両者の合併)を含む炎症性閉塞性呼吸器疾患の難治化要因を解明することである。その重要な要因として我々は身体/精神な疲労を考え、その新規バイオマーカーとして成人のほとんどに潜伏感染しているヒトヘルペスウイルス属HHV-6、HHV-7の再活性化関連因子(唾液中のHHV-6/7(DNA)量およびHHV-6再活性化中間状態で発現するSITH-1に対する抗体価)に注目した。慈恵医大ウイルス研の近藤らの検討により、健常人の急性疲労ではHHV-6/7(DNA)は増加し、疲労が慢性化するとHHV-6/7の順で低下する、また抗SITH-1抗体はメンタルな異常と関連し、健常者の陽性率1.7%に対し鬱や慢性疲労性症候群では50%を超える、等が示されている。今回、我々は炎症性閉塞性呼吸器疾患(COPD/ BA/ ACOS)において上述の疲労マーカー、鬱スコア(BDI)および炎症マーカー(WBC、8OHdG、Fibrinogen等)を測定した。対象26名(63.2±13.4歳、男/女= 20/6名、COPD/BA/ACOS= 5/11/10名、全て安定期)。高HHV-6/7率(%)は両ウイルスで等しく(40.0/36.4/30.0前述順)であったが、抗SITH-1抗体陽性率(%)は(0.0/18.2/20.0)、BDI≥10pの率(%)は(0.0/4.5/30.0)であった。一方、炎症性マーカーはCOPD/ACOSで高くBAで低値であった。以上から、COPD/ BA/ ACOSの疾患群では3~4割が高度疲労を呈し、COPDで全身性炎症が高く、BAはメンタル異常の存在が示唆された。またACOSでは、両方の割合が高かった。これらの成果は、2015年の呼吸器学会および同年の米国胸部疾患学会にて発表された。
2: おおむね順調に進展している
疲労関連因子に関して、ある程度の症例数をそろえて検討することができた。疲労マーカーと疾患の関連について、興味深い知見を得ることができた。今後は対象疾患患者数を増やして検討することが必要である。
以下を企画推進する。1)炎症性閉塞性呼吸器疾患(COPD/ BA/ ACOS)の対象患者数を増大させ、疲労関連因子(HHV-6/7とSITH-1)と各疾患病態、疾患重症度、症状スコアとの関連をより詳細に検討する。2)対象患者を前向きに評価し、疲労関連因子(HHV-6/7とSITH-1)と病態予後(疾患増悪、肺機能減衰、生命予後等)との関連を検討する。3)疲労関連因子の中で特にSITH-1の働きについて検討し、喘息の難治化のメカニズムにSITH-1 Ab高値のメンタル異常がどの様に関与するのかを明らかにする。4)疲労関連因子以外の難治化因子として、TRPチャンネル分子やTSP-1を検討する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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