研究課題
我々は、まずオボアルブミンを用いて気管支喘息マウスモデルを作成し、一酸化窒素(NO)と気管支喘息の関係について検討を行った。その結果、NO合成酵素(NOS)完全欠失マウスでは、wild-type マウスと比較し、好酸球性炎症や気管支壁肥厚、ムチン産生が減少することを明らかにした。また、気管支喘息の病態としてはTh2サイトカインが重要であるが、NOS完全欠失マウスでは肺組織中のIL-4、IL-5、IL-13といったTh2サイトカインが減少することを明らかにし、気管支喘息形成において、NOは重要な役割を果たすことを報告した(Akata K, Yatera K, et al. Lung 194:121-4, 2016)。次に、NOと慢性閉塞性肺疾患(COPD)との関係を明らかにするために、豚膵エラスターゼを用いてCOPDマウスモデルを作成し、検討を行った。その結果、病理学的評価にて、NOS完全欠失マウスでは、wild-typeマウスと比較し肺胞間隔壁距離の有意な増大、また、炎症細胞の増加が認められ、このことから気腫性変化が悪化していることが示された。また、この現象がNOによる真の影響であるかどうかを明らかにするために、無機NOによるNO補充療法を行ったところ、NOS完全欠失マウスCOPDモデルで確認された気腫性変化の悪化は、無機NO補充にて改善することが明らかになった。これらの結果より、COPDにおいては、NOは保護的な役割を果たすことが示された。その後、我々は、NOがこれら呼吸器疾患に与える機序として、マクロファージに注目し、感染免疫における各種NOSやNOの検討を行うこととした。現在検討中であるが、NOS完全欠失マウスでは、肺障害に伴い、マクロファージの誘導因子である、CCL-2がタンパク・mRNAレベルで有意に増加することを明らかにしており、現在、マクロファージのサブタイプであるM1マクロファージ、M2マクロファージとCOPD、気管支喘息、そして感染免疫との関係について検討中である。
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Am J Respir Crit Care Med
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10.1164/rccm.201709-1783OC