研究課題
糖尿病性腎症は末期腎不全の第1位の原因疾患であり、近年オートファジー機構がその成因に関係することが注目されつつある。また特にこれまでは糖尿病性腎症の障害部位は糸球体が中心であるとされてきたが最近、尿細管も注目されつつあり、ノックアウトマウスを用いた解析ではどちらの細胞でオートファジーが障害されても、腎不全につながる事がわかっている。我々は近年、ノックアウトマウスや阻害薬を用いた解析で非受容体型チロシンキナーゼであるFynが糖尿病状態やメタボリック症候群の病態に関する事を報告してきた。またFynが筋肉においてオートファジーを介してその損耗を調節することを報告してきた。ところがFynの近位尿細管での役割の報告はこれまでにないため、更なる検討をする事にした。その結果、近位尿細管細胞株HK-2において、①活性型Fynを過剰発現したところ、オートファジーの阻害を認めた。②Fynをノックダウンしたところ、オートファジーの活性化を認めた。③Fynによってオートファジー活性に重要であるとされているBeclin1(Atg6)の調節因子であるTransglutaminase2のチロシン残基がリン酸化されている事が判明した。④Transglutaminase2の過剰発現によってオートファジーの阻害を認めた。これらの結果はFynが近位尿細管でTransglutaminase2のリン酸化を介してオートファジーを調節している可能性を示唆しており、糖尿病性腎症のみならずオートファジーの新たなメカニズムの解明に寄与する可能性があると考えられる。
3: やや遅れている
HK2細胞におけるオートファジー調節機構の解析が困難で遅れている。
今後は細胞の変更や、in vivoでの解析への変更/転換を考えている。
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