糖尿病性腎症は末期腎不全の第1位の原因疾患であり、その障害部位は糸球体が中心であるとされてきたが最近、尿細管も注目されつつある。一方でオートファジー機構がその成因に関係することが注目されてきた。我々は近年、ノックアウトマウスや阻害薬を用いた解析で非受容体型チロシンキナーゼであるFynが糖尿病状態やメタボリック症候群の病態に関する事を報告してきた。またFynが筋肉においてオートファジーを介してその損耗を調節することを報告してきた。ところがFynの近位尿細管での役割の報告はこれまでにないため、更なる検討をする事とし、近年、①近位尿細管細胞株HK-2において、活性型Fynを過剰発現したところ、オートファジーの阻害を認め、逆にFynをノックダウンしたところ、オートファジーの活性化を認めた。②質量分析を用いた検討ではFynによってオートファジー活性に重要であるとされているBeclin1(Atg6)の調節因子であるTransglutaminase2(Tgm2)の369番目と617番目のチロシン残基がリン酸化されていることが判明し、それらをフェニルアラニンに置換した変異体はFynの過剰発現にても全くリン酸化されないことを報告してきた。しかしこれらの結果は近位尿細管でTgm2がオートファジーを調節している直接的な証拠にはならない為、更なる検討を行った。HK-2細胞にTgm2を過剰発現し、オートファジーの阻害薬であるアンモニウムクロライドとロイペプチンを使用し、オートファジーfluxの検討を行ったところ、Tgm2を過剰発現した細胞でオートファジー活性の低下を認めた。これらの結果は糖尿病性腎症のメカニズムの解明に寄与する可能性があると考えられる。
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