最終年度は主に腎尿細管間質の線維化について検討をおこなった。EVG染色等で腎線維化の評価を行ったところ、40週齢のCD11c特異Shp1欠損マウス(Shp1-CKOマウス)では、線維化領域の増加を認めた。腎臓内の細胞に対してフローサイトメトリー解析を施行したところ、F4/80high細胞において筋線維芽細胞マーカーであるαSMAの発現がみられた。F4/80+細胞の多くはCD11c+であることから、Shp1欠損の腎単核食細胞では、筋線維芽細胞への形質転換が亢進し、腎線維化に直接的に関与している可能性が示唆された。これらの知見も含め、本課題の研究期間全体を通しての以下のことが明らかとなった。Shp1-CKOマウスでは、増殖性糸球体腎炎とともに腎尿細管間質障害が生じる。免疫組織染色では糸球体と尿細管間質へのCD11c+細胞の集積と、尿細管間質へのF4/80+ 細胞とCD4+ T細胞の集積がみられ、フローサイトメトリーを用いた腎臓内細胞の解析では、CD11c+ F4/80 highのダブルポジティブ細胞が多数存在することが明らかとなった。また腎内のCD4+ T細胞はIFNγ、IL-2、TNFα産生細胞が主体でありTh1細胞と考えられた。以上の結果より、Shp1-CKOマウスの腎尿細管間質障害において、CD11c+F4/80+の腎単核食細胞が重要な役割を果たし、Th1細胞の集簇を引き起こすとともに、線維化にも直接的に関与する可能性が示された。腎尿細管間質障害・腎線維化は末期腎不全への進展においてほぼ共通してみられる重要な悪化因子である。本研究において腎単核食細胞を介した腎尿細管間質障害・腎線維化の障害機序の一端を明らかにすることができた。現在論文作成中である。
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