研究課題/領域番号 |
15K09245
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野入 英世 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (00301820)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | floxed mice / ターゲットリシークエンス / inhibitor of DNA binding |
研究実績の概要 |
研究チームでは,近年全ゲノム解析によりrs16946160の一塩基多型(SNP)が成人のネフローゼ症候群発症に関わることを報告した.糸球体上皮細胞のGPC5の発現レベルに関与し,蛋白尿発症強度を制御していることを示した.これにより,機能的なヘパラン硫酸制御への国内外の専門家の関心が一機に膨らんでいる.本研究成果の中で,ヘパラン硫酸のグリコサミノグリカンを制御する酵素として知られているサルファターゼ(SULF)の機能不全が,蛋白尿発症強度を変える可能性が標識SNPのrs11086243により示唆された.そこで,本研究提案に先立つ科研費基盤研究(B)において,この領域に関わる詳細な解析を行い,発症に関わるハプロタイプを同定した.Ion Proton用にAmpliSeq Custom Panel作成(IAD68525_188)し,SULF1/PREX1領域のターゲットリシークエンスをCase (n=14), Control (=14)で行った.各症例より取得したvariant (一検体当り約1,000以上)を症例毎にファイルする作業を経て,common variantよりLD構造を決定し,機能的なrare variantの絞り込みへと進んでいる. 糸球体培養細胞での検討より,BMP6下流のSmad1/5/8, p38, ERK1/2のリン酸化を通して,inhibitor of DNA binding 1-3 (Id1-3)の中で,特にId1への影響が大きいと考えられるため,floxed-Id1マウスを作成し確認作業を経てpodocin-Cre-ERT2とのF1を作出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【Common variantについて】1000 genomes(Total)をreferenceにして,研究チームがこれまでに実施済みのFine mapping data(約300 SNPs, case 200 vs. ctrl 300)を利用したimputationを実施した.ここで研究チームが見いだしたハプロタイプ以上に高いp値を有するSNPまたはハプロタイプは存在しないことが,SULF1/PREX1領域のターゲットリシークエンス確認された.【機能解析について】研究チームの保有するpodocine-CreERTを用いた糸球体上皮細胞特異的遺伝子欠損の効果を検討する遺伝子としてId1を決定した.更にId1のfloxed化に成功した.このF1によるCre-Loxを用いてタモキシフェンによるconditional KOを糸球体培養細胞上で実施し,アルブミン尿の出現に差があることを見いだしつつある.
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今後の研究の推進方策 |
Cre-Loxを用いてタモキシフェンによるconditional KOを糸球体培養細胞上で実施し,データを蓄積中である.同時に,研究チームの本システムが,糸球体培養細胞上に限局した遺伝子誘導を出来ていることを確認する目的で,確認実験をtdTomato-Loxのシステムを用いて検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
SULF2 KO miceを用いたネフローゼモデルについてピューロマイシンとFGFによる従来の手法で検討を行い一定の成果を得ているが,その他のタンパク尿を生じうるモデルにおいての検討を追加する必要が生じた.そのため,BDF1バックグラウンドのSULF2 KO miceを用いた追加検討を要する.年度を跨いだ予算執行で齟齬が生じる可能性を回避するため,年度明けに同マウスの作出を行なう必要があり次年度使用を申請した.
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次年度使用額の使用計画 |
本検討を行うためには,凍結胚よりBDF1バックグラウンドのKO miceを作出する.遺伝子発現が減じていることを確認し,次年度に♂のSULF2 KOマウスを約20個体作出する予定である. 追加検討を経て,一連の結果を総括し論文投稿を行う.
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