研究実績の概要 |
研究代表者は,近年全ゲノム解析によりrs16946160の一塩基多型(SNP)が成人ネフローゼ発症に関わることを報告した.糸球体上皮細胞のGPC5発現レベルがタンパク尿発症強度を制御していることを示したことで,機能的ヘパラン硫酸(HS)制御への国内外の専門家の関心が一機に膨らんでいる.GPC5に加えてHS制御酵素として知られるSULFの機能不全が関与する可能性は標識SNPのrs11086243により示唆され,本研究に先立つ基盤研究(B)でこの領域を中心に詳細な解析を実施し,発症に関わるハプロタイプをSULF PREX1間で同定した.SULF機能の腎に関する国内外の検討は,SULF1,SULF2それぞれの遺伝子操作による機能欠損が報告されており,SULF1における軽微なアルブミン尿を認めるのみで,その後SULF1, 2の双方を欠損させる検討を行い糸球体障害による腎症が顕在化することを確認した検討がある.しかし日本人の腎症におけるタンパク尿重症化には,SULF2側が関連しており,SULF2に関する詳細な検討が必要である.本研究では,LD構造の不十分なSULF/PREX1領域のtarget re-sequencingを,Ion Proton用にAmpliSeq Custom Panelを作製し(IAD68525_188),Case (n=14), Control (n=14)で実施した.各症例より取得したvariantを症例毎にファイルとする作業を経てcommon variantを見いだしてLD構造を決定した.Region wideな解析を行ったが,ハプロタイプを越える有意な疾患感受性のvariantは見いだされなかった. 一方,培養糸球体上皮細胞を用いた検討より,BMP6下流のシグナルとしてSmad 1/5/8, p38, ERK1/2のリン酸化を通して,inhibitor of DNA binding 1-3 (Id1-3)の発現が修飾されることが分かった.特にId1への影響が強いと思われ,floxed-Id1を作製し糸球体上皮に発現させてネフローゼ刺激の影響を検討した.
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