研究課題
慢性腎不全によって慢性透析に導入される患者数は依然減少を見ず、腎不全のみならず、心血管疾患の合併などで生命予後も不良である。腎障害の発症・進展期には炎症促進系細胞が、また障害修復期には免疫抑制性細胞がそれぞれ関与していることが報告されているが、その詳細や、制御機構については不明な点が多い。進行性腎障害を、免疫担当細胞・腎固有細胞の慢性炎症の視点から検討し、新たな検査・治療標的を創出することが本研究の目的である。今年度は慢性腎不全の一番の原因である、糖尿病性腎症の進展機序と、その防御因子について解析を行った。ヒト血管内皮細胞を、高糖刺激すると、炎症性サイトカイン・ケモカインなどの遺伝子発現が亢進した。また、接着因子などの発現も亢進した。これらのことは、高糖が直接血管内皮の炎症を惹起し、白血球の内皮への接着や、組織浸潤を誘導することを示唆していた。われわれは、さらに、これらの防御因子についても検討し、その薬剤効果を確認した。薬剤添加によって、これらの発現が低下し、炎症が低下したことが確認された。また、炎症関連マーカーのみならず、細胞内シグナルも、高糖および薬剤添加により、変化することが確認された。新たな治療薬の可能性となる結果であり、現在、論文投稿中である。また、これらの動物モデルにおける検討も現在行っている。マウス糖尿病モデルでは、ヒト糖尿病性腎症でみられるような組織所見を得ることはむつかしいが、我々は、片腎を摘出したモデルにより、糸球体の拡大や、尿細管障害などの所見を得ることに成功した。これらのモデルを用いて、糖尿病性腎症の進展を防御する可能性をもつ薬剤について検討を続けている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件)
Ther Apher Dial.
巻: epub ahead ページ: epub ahead
10.1111/1744-9987.12651.
Kidney Int.
巻: 92 ページ: 1356-1369
0.1016/j.kint.2017.04.032.
Kidney Int Rep.
巻: 8 ページ: 133-141
10.1016/j.ekir.2017.08.017.
Sci Rep
巻: 14 ページ: 5392
10.1038/s41598-017-05624-2.