研究実績の概要 |
(1)PPAR-α欠損マウス(PAKO)における易糸球体障害性の評価と障害機序の解析: PAKOマウス(全組織での欠損)と対照マウス(S129)にドキソルビシン(DOX)を10mg/kgで1回静注しPAKOマウスで3日, 4日, 7日, 2週後に、より高度の蛋白尿と糸球体障害を認めた。腎組織のイムノブロット(IB)解析では3日後に欠損マウスで、より高度のBaxの発現増強を確認した。また、9日後の腎組織のIB解析では、欠損マウスで、より高度のp62発現とLC3-II/Iの低下を認め、これは蛋白尿の程度と相関していた。9日後の腎組織の免疫染色では、欠損マウスでボウマン嚢上皮と糸球体上皮により高度のp62発現を認めた。これらは、PPAR-α欠損マウスでオートファジー活性の低下を推測させた。
(2)マウス培養細胞を用いた実験: マウス培養糸球体上皮細胞(mPod)のDOX(1ug/ml)で誘導される早期・晩期のアポトーシスがPPAR-α活性化薬[フェノフィブレート(FF); 100μM]で40%抑制された。また、FFはオートファジーを亢進させ、これが細胞保護作用に関連する可能性があった。また、マウス尿細管細胞株(mProx)のシスプラチン(25μM)誘導性のアポトーシスは、PPAR-δ活性化薬のGW0742(1μM)で20%程度抑制された。GW0742はBaxのミトコンドリア蓄積とチトクロームCの流出を抑制してカスパーゼ3活性化を軽減し、アポトーシスの抑制することが判明した。この作用は部分的にPPAR-δ依存性であった。
(3) 糸球体PPAR-δ欠損マウスの作出実験: 同欠損マウスを作出したが、ドキソルビシンで糸球体障害は誘導されなかった。これは、B6系でドキソルビン抵抗性が強いためと推測され、現在、S129系へバッククロスを実施中である。
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