研究課題/領域番号 |
15K09255
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石本 卓嗣 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00534835)
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研究分担者 |
丸山 彰一 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10362253)
小杉 智規 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90584681)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高血圧 / 塩分感受性 / フルクトース / フルクトキナーゼ |
研究実績の概要 |
フルクトースを含有する糖の摂取量の増加と、メタボリックシンドローム・ 高血圧・慢性腎臓病との相関が指摘されており、これらはそれぞれが独立した慢性腎臓病(CKD)・腎機能低下の危険因子である。また、フルクトキナーゼ(KHK)はフルクトースを代謝する酵素であり、2つのアイソザイム(KHK-C・KHK-A)が存在するが、KHK-C・KHK-Aのそれぞれの役割は解明されていない。本研究の目的は、1)フルクトースの長期・多量摂取による高血圧・慢性腎臓病の発症・進展機構を解明すること。2)フルクトースの長期・多量摂取における主要臓器・血液・尿中の代謝産物の網羅的解析、3)フルクトース摂取と食塩感受性高血圧との関連及びKHKの役割を解明することである。
1)2)野生型マウス(WT)・KHK-A/C欠損マウス(KHK-A/C KO)・KHK-A欠損マウス(KHK-A KO)を用いてフルクトースの長期・多量摂取によるモデル作成し、開始6ヶ月及び9ヶ月時点で、KHK-A KOと比してWTにおいて有意な血圧の上昇を確認した。上記の病態モデルマウスの血液・尿・腎・肝・腸・心・虫垂内容物をメタボローム解析中である。
2)WT・KHK A/C KOを用いてフルクトース・食塩負荷高血圧モデルを作製した。WTにおいてフルクトース・食塩負荷はフルクトース単独及び食塩負荷単独群に比して血圧の上昇を誘導すること、尿中Na排泄が低下すること、一方KHK-A/C KOにおいては血圧の上昇を認めず、尿中Na排泄がWTに比して上昇することを確認している。また、免疫染色にてNHE3は近位尿細管においてKHKと共局在し、フルクトース摂取に伴いWTにおいてNHE3発現の増加を認めるが、KHK-A/C KOにては変化を認めないことも確認した。 ENacには有意な変化を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)、2) フルクトース負荷においてWTにて有意な血圧の上昇を認めたが、KHK-A KOにおいてはフルクトース負荷による血圧の上昇を認めなかった。また、全群で明らな血清Crの上昇は認めなかった。腎組織の解析では、Na再吸収に関連する分子(NHE3、ENac等)に有意な変化を認めなかった。また、KHK-A/C KOについては、著明な体重低下を認め、血圧・腎機能の評価に適さないと考えられたため、3ヶ月時点で終了としている。上記マウスの血液・尿・腎・肝・腸・心・虫垂内容物サンプルをメタボローム解析中である。
3) Na排泄についての解析を進めている。これまでにNa + /H + 交換輸送体3(NHE3)の発現がWTとKHK-A/C KOとの間に有意な差を認めることを確認しているが、他のNa再吸収に関連する分子(ENac等)については有意な差を認めなかった。食事性・腸管での吸収の要素を除外するため、フルクトース摂取下での食塩の腹腔内投与にて、腎でのNa排泄を追加検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
1)、2) KHK-A/C KOについては、生存が可能なフルクトース負荷量に変更して検討中である。また、既に採取しているサンプルを用いて、血液生化学検査・メタボローム解析を用いて、メタボリック症候群及び高血圧とKHK-C・KHKーAそれぞれの代謝の関連を検討する。 3) 引き続き、計画に沿って解析を進める。NHE3の発現に関与する分子(DPP4・megalin)とKHKの関連の解析も進める。また、フルクトース摂取下での食塩の腹腔内投与における腎でのNa排泄についての解析を進める。また、近位尿細管の初代培養細胞及び不死化近位尿細管細胞株を用いて、フルクトース負荷でのNHE3発現、NHE3活性及び関連分子の検討をする。
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