研究課題/領域番号 |
15K09257
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
秋山 真一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (20500010)
|
研究分担者 |
丸山 彰一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10362253)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 膜性腎症 |
研究実績の概要 |
本研究では、特発性膜性腎症の中でも抗Phospholipase A2 receptor(PLA2R)抗体に関連するとされるタイプの“抗PLA2R抗体関連膜性腎症”を対象にして、我が国における本疾患の総合解析研究に取り組む。すなわち、目的①:抗PLA2R抗体測定系の高性能化と測定診断プロトコル最適化、目的②:日本人患者における抗PLA2R抗体関連膜性腎症の実態解明、目的③:培養ヒトポドサイトおよびポドサイト特異的ヒトPLA2R発現マウスを用いたin vitro・in vivo両面での病態機序解析ツールの構築を目的とし、最終的には抗PLA2R抗体関連膜性腎症の診断・病態理解・治療の進展に資するevidenceの集積を目指している。 開始年度にあたる平成27年度は、上記の目的①に対して、いつでもどこでも誰でも、妊娠検査薬なみの手軽さで抗PLA2R抗体を測定できる世界初の抗PLA2R抗体の簡易診断チップの開発に成功するとともに、並行して開発した抗PLA2R抗体測定用ELISAシステムと併せて、日本の臨床における抗PLA2R抗体による特発性膜性腎症の鑑別診断プロトコルを構築できた。続いて、目的②に対して、日本人患者における抗PLA2R抗体の陽性率は53%で欧米での陽性率に比べて若干低いこと、PLA2R抗体のIgGサブクラスはIgG4が優勢でPLA2Rの立体エピトープを特異的に認識すること、ネフローゼ症候群の病勢(蛋白尿値)の推移に対して経時的かつ先行して変動すること、などを明らかにした。さらに、目的③に対して、ヒトPLA2Rをポドサイト特異的に発現するトランスジェニックマウスを構築し、ポドサイトにヒトPLA2Rタンパク質が狙い通り発現していること、ヒト培養ポドサイトにおいて細胞表面にPLA2Rタンパク質が発現していることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、目的①「抗PLA2R抗体の測定系および抗PLA2R抗体関連膜性腎症診断法の確立」、目的②「日本人患者における抗PLA2R抗体関連膜性腎症の実態解明」、目的③「in vivoおよびin vitroにおける本疾患病態解析法の開発」を研究目標の3本柱に据えて、日本における抗PLA2R抗体関連膜性腎症の実態と病態機序の解明を目指すものである。上述の通り、初年度の取り組みにより、何れの研究目標も計画通り進展して、次年度以降の研究基盤の整備も完了し、達成目標値を達成することができている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り、初年度に構築した研究基盤(ツール、情報、検体、動物)を駆使して、本研究を推進する。具体的には、開発した抗PLA2R抗体測定用簡易診断チップとELISAシステムを駆使して、日本における抗PLA2R抗体関連膜性腎症患者における抗PLA2R抗体の分布、IgGサブクラス、病勢との相関、予後との相関などについて横断的および縦断的研究を推進するとともに、ヒト培養ポドサイトおよびヒトPLA2Rポドサイト特異的発現マウスに抗PLA2R抗体を投与して病態モデルの構築を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度の予算に対して使用額が少なくなった理由として、研究の進捗が予想より順調に進み、実験系のダウンサイジングの成功と検討期間の短縮により、初年度の消耗品使用額が少なくなったことが大きい。また、次年度以降に計画している臨床検体を用いた調査研究および培養細胞や動物モデルを用いた検討に多大な支出が予想されたので、貴重な研究資金を有効活用するために次年度に繰り越して使用する研究費使用戦略を取った。
|
次年度使用額の使用計画 |
臨床検体を用いた調査研究および培養細胞や動物モデルを用いた検討における実験消耗品費として使用する計画である。
|