【背景】我々は以前にエリスロポエチン(EPO)産生細胞を含む線維芽細胞が腎臓病の過程でmyofibroblastに形質転換し、線維化を促進すると同時にEPO産生能を失うことを報告したが、EPO産生細胞が線維芽細胞の特殊な細胞集団か否かは未解明であった。 【方法】Epo遺伝子座に誘導型Creをノックインした新規遺伝子組み換えマウスEpo-CreERT2マウスを作製し、indicatorマウスと交配した仔に任意の時点で組換えを誘導した。 【結果】Epo-CreERT2標識細胞は腎皮髄境界の間質に集族して存在する線維芽細胞であり、線維芽細胞全体の約2%を占めた。組み換え直後の同標識細胞の約50%がEpo mRNAを発現し、16週間後も同じく約50%がEpo mRNAを発現していた。同マウスに線維化モデルを惹起した結果、標識細胞はmyofibroblastに形質転換すると共に増殖し、線維芽細胞に占める割合が約5倍に増加した。Ki67陽性頻度も標識線維芽細胞で高かった。 【考察】新規遺伝子組み換えマウスを作成し、任意の時点でEPO産生細胞を標識することを可能にした。同マウスを用いて、成体腎におけるEPO産生細胞がmyofibroblastに形質転換し、増殖することを初めて証明した。EPO産生細胞は繰り返しEPO産生を行い、他の線維芽細胞より増殖しやすい性質を有することから、特殊な線維芽細胞集団である可能性が示唆された。
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