研究課題/領域番号 |
15K09261
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森貞 直哉 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00389446)
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研究分担者 |
庄野 朱美 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10535066)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CAKUT / NPHP-RC / 次世代シークエンサー |
研究実績の概要 |
2015年度において、本研究では先天性腎尿路奇形症候群(congenital anomalies of the kidney and urinary tract, CAKUT)および原因不明の小児期発症腎機能障害をもつ患者に対し、次世代シークエンサー、アレイCGHを用いた網羅的遺伝子解析を行った。患者または親権者から文書による同意を取得し、患者末梢血からゲノムDNAを採取して解析を行った。研究開始から2015年度末までで274家系307症例の解析を行い、そのうち80家系(29.2%)98症例で遺伝子変異を同定した。原因遺伝子はEYA1が17家系、PAX2が14家系、HNF1Bが9家系で、これらの腎発生に必須な転写因子の遺伝子変異例が多く認められた。その他CREBBP、GATA3などのまれな症候性(syndromic)CAKUTの原因遺伝子変異例も同定した。 一方でCAKUTではなくネフロン癆関連繊毛病(nephronophthisis related ciliopathy, NPHP-RC)であった症例が20家系で認められた。NPHP-RCの原因遺伝子はNPHP1のほか、WDR19、WDR35、SDCCAG8など本邦ではこれまでに報告例がないものや、OFD1の男児例など世界的に見ても極めてまれな症例の変異同定を行った。臨床診断では当初腎コロボーマ症候群などのsyndromic CAKUTと考えられた例が実際はNPHP-RCであったことは、両者は疾患原因や遺伝形式が異なる(syndromic CAKUTは多くは常染色体優性、NPHP-RCは常染色体劣性)ことから遺伝カウンセリングを行う上でも興味深い。臨床的にCAKUTとNPHP-RCの鑑別は困難な場合があり、これらを遺伝学的に鑑別することは非常に重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では全国の医療機関からCAKUTもしくは小児期発症の原因不明腎不全例を集積しているが、2015年度だけで48家系を集めることができた。引き続き学会などを通じて全国の医療機関に協力をお願いする。 小児期末期腎不全の原因としてCAKUTのほかにNPHP-RCも重要であるが、われわれの研究を通じてNPHP-RCが従来考えられていた以上に多く、この鑑別には次世代シークエンサーが有用であることを論文として示すことができた(Yamamura T, Morisada N et al, Clin Exp Nephrol 2016]。 アレイCGHでは総排泄腔遺残症例において染色体1q21.1領域の欠失を世界で初めて同定し、論文として報告した(Morisada N et al, Eur J Med Genet, in press)。
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今後の研究の推進方策 |
目標症例数は500であり、今後も症例集積を進める。CAKUTのみではなく、小児期末期腎不全の原因解明のためあわせてNPHP-RC症例も集積し、小児期末期腎不全の診断ストラテジーを確立する。 原因遺伝子が不明となっている症例、特に常染色体優性間質性腎炎(Autosomal dominant tubulointerstitial kidney disease、ADTKD)の症例においては明らかな家族性を持ちながら従来の原因遺伝子が同定できない家系が複数あり、平成28年度以降に、新規遺伝子の同定を目的とした全エクソン解析を施行する予定である。 また変異は同定されたが病因性が未定となっている症例についてはin vitroの解析系を用いた機能解析を実施する。その過程でiPS細胞を用いた研究も行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定金額を使用したが、消耗品などの節約で6,618円が残金となった。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費として使用予定。
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