研究課題
昨年の本研究報告において、先天性腎尿路異常(CAKUT)とネフロン癆関連繊毛病(NPHP-RC)の臨床的鑑別が困難であることを報告した。このことを踏まえ、2016年度は新たに95家系のCAKUT、ネフロン癆もしくは遺伝性が疑われる原因不明の腎機能障害例を追加し、患者または親権者から文書による同意を取得して患者末梢血からゲノムDNAを採取して解析を行った。2015年から2016年にかけて世界で初めてCAKUTとネフロン癆を同時に解析できる次世代シークエンサー遺伝子解析パネルを作成し、3回に分けて157症例の解析を行った。解析遺伝子数と解析症例数は、それぞれ91種・44例、128種・72例、172種・45例であった(4例は別パネルで2回施行した)。このうち30例で原因遺伝子変異が同定できた(19.1%)。このパネル解析では常染色体劣性多発性嚢胞腎PKHD1変異5例、常染色体優性多発性嚢胞腎PKD1変異4例のほか、CAKUT 11例(原因遺伝子:HNF1B、PAX2、SALL1、RET、REN、GATA3)、NPHP-RC 9例(原因遺伝子:OFD1、TTC21B、BBS10、NPHP1、NPHP3、SDCCAG8、TMEM67、WDR19)、巣状糸球体硬化症(IFN2)の遺伝子変異を同定した。特にNPHP-RCの症例においては本邦ではほとんど報告例がないものが認められた。また、2016年度に解析した2例について、アレイCGHにより染色体異常を同定した(1q23-q24欠失例と4pと5qの不均衡転座例)。後者は染色体Gバンド法では同定不可能な姉妹例であり、遺伝カウンセリングにおいてきわめて重要な知見であった。CAKUTやNPHP-RCの概念および遺伝学的同定手法については腎臓専門医でもよく理解されていないため、学会などで積極的に報告絵を行った。さらに論文報告を準備中である。
3: やや遅れている
CAKUTなどの症例検体数は研究開始からこれまでに約400家系を集積した。これらを用いた次世代シークエンサー、アレイCGHによる既知遺伝子の遺伝子変異検索手法は確立した。ネフロン癆との遺伝学的な鑑別手法も新たに開発を進め、その結果を用いた遺伝カウンセリング手法も検討中である。しかし現在のところ新規遺伝子の同定には至っておらず、またiPS細胞の樹立も出来ていない。そのため「やや遅れている」とした。
既知遺伝子のスクリーニングが終了した原因不明のCAKUT症例について、全エクソン解析での検索を進める。また、適切な症例を選択してiPS細胞の樹立を進め、基礎研究につなげる。
研究費を計画的に使用した結果、わずかに剰余金が生じた
次年度の研究費の一部に充当する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (2件)
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