研究課題
2017年度において、本研究では先天性腎尿路異常症候群(CAKUT)および原因不明の小児期発症腎機能障害をもつ患者に対し、主に次世代シークエンサー(NGS)ターゲットパネルを用いた遺伝子解析を行った。患者または親権者から文書による同意を取得し、患者末梢血からゲノムDNAを採取して解析を行った。パネルにはCAKUT、およびCAKUTと混同しやすいネフロン癆、嚢胞性腎疾患(常染色体優性多発性嚢胞腎や髄質嚢胞腎など)の原因遺伝子を組み入れた。また腎発生に関与していることが疑われているがこれまでにヒトでの遺伝子変異の報告例がないもの(CTDNEP1など)なども組み込んだ。研究開始から2017年度末までで531家系の解析を行い、そのうち185家系(34.8%)で遺伝子変異を同定した。原因遺伝子のうち特に多かったのはEYA1が28家系、PAX2が24家系、HNF1Bが23家系で、これらの腎発生に必須な転写因子の遺伝子変異例が多く認められた。PAX2の1家系、HNF1Bの5家系はそれぞれの遺伝子を含む染色体微細欠失で、特にPAX2の1家系はNGSでのコピー数データ解析により同定しえた本邦初の症例である。その他われわれのNGSパネルではGATA3,SALL1などの比較的軽微な腎外症状をともなうsyndromic CAKUT、MUC1、UMOD、RENなどの髄質嚢胞腎、BBS10やPKHD1などの嚢胞性腎疾患をともなう繊毛病(シリオパチー)を同定した。このうちMUC1はVNTR(繰り返し配列)内にある1塩基挿入を同定し、これまでNGSでの同定は極めて難しいとされていたものである。これらの成果を学会や論文上で報告した。しかし残念ながら新規CAKUTの原因と考えられる遺伝子の異常は同定できなかった。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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