研究課題
平成27年度計画として、半月体形成性腎炎におけるMRP8の役割を検討した。抗GBM抗体陽性GoodPasture症候群から急速進行性糸球体腎炎を呈した患者さんから得られた腎生検標本を用いてMRP8染色を行ったところ、ヒトGBM腎炎の腎糸球体においても半月体形成部分に非常に強いMRP8陽性細胞の集簇が確認された。さらに骨髄細胞特異的MRP8欠損マウスにnephrotoxic serum投与によるGBM腎炎を誘導したところ、骨髄細胞特異的なMRP8の欠損は尿蛋白を減少させることが確認された。糸球体局所でMRP8が発現誘導される機序について培養細胞を用いた検討を行ったところ、メサンギウム細胞培養上清刺激はmacrophageのMRP8産生を強力に誘導、その効果はTLR4阻害薬では一部しか遮断されなかった。in vivo, in vitroの結果から想定される糸球体内細胞間クロストーク機序の詳細を検討する目的でTHP-1 dual reporter細胞を用い、メサンギウム細胞培養上清(Mes-sup)刺激が単球-macrophageに炎症を誘導する機序について検討した。その結果、Mes-sup刺激は分化誘導前後ともに濃度および時間依存性にNFkB経路を活性化した。またluciferase活性測定によるIRF経路活性化についても同様であったが、長時間刺激によるIRF経路活性増強は分化誘導前の単球状態においてより強く認められた。これらの活性化はいずれもTLR4阻害薬による遮断効果は部分的であった。以上より、MCはTLR4非依存性に単球-macrophageのERストレスを惹起する可能性が考えられた。現在、Mes-sup中に分泌される細胞間クロストークに重要なターゲット因子について探索中である。
2: おおむね順調に進展している
in vivo, in vitroの検討ともに、おおむね当初の計画通りに進行している。具体的には抗GBM抗体陽性GoodPasture症候群から急速進行性糸球体腎炎を呈した患者さんの腎糸球体の半月体形成部分に非常に強いMRP8陽性細胞の集簇が確認できた。さらに骨髄細胞特異的MRP8欠損マウスを用いた検討により、骨髄細胞特異的なMRP8の欠損はGBM腎炎誘導時に認められるmacrophageのM1 dominanyを抑制、尿蛋白を減少させることが確認された。in vitroの検討では、メサンギウム細胞培養上清刺激はmacrophageのMRP8産生を強力に誘導、その効果はTLR4阻害薬では一部しか遮断されなかった。想定される糸球体内細胞間クロストーク機序の詳細を検討する目的で行った、レポーター細胞を用いた検討によりメサンギウム細胞培養上清(Mes-sup)刺激は分化誘導前後ともに濃度および時間依存性にNFkB経路を活性化した。またluciferase活性測定によるIRF経路活性化についても同様であったが、長時間刺激によるIRF経路活性増強は分化誘導前の単球状態においてより強く認められた。これらの活性化はいずれもTLR4阻害薬により完全には遮断されなかった。レポーター細胞を用いた炎症誘導機序の経時的推移を鋭敏にモニターできる系を作成できた。この系を用いることで細胞間クロストークにかかわる候補分子のスクリーニングを効率的に進めることが可能になり、次年度計画の遂行に役立つと思われる。以上より、MCは少なくとも一部はTLR4非依存性に単球-macrophageのERストレスを惹起する可能性が考えられ、新たなターゲット探索は病態解明に有用と思われる。
当初の平成28年度計画ではA-ZIP/F-1脂肪萎縮性糖尿病マウスと骨髄細胞特異的MRP8欠損マウスを交配させることで糖尿病性腎症進展にMRP8が果たす役割を検討する予定としていたが、A-ZIP/F-1マウスはもともと妊孕性が低く、遺伝子改変マウスとの交配による産仔が十分に得られていない。そこで計画を一部変更し、前述のレポーター細胞を用いた細胞間クロストーク誘導因子の探索を行うこととする。in vivoの検討で糸球体浸潤macrophage特異的なMRP8陽性率高値を認めることから、メサンギウム細胞から分泌される液性因子はparacrineに作用する機序が想定される。エクソソームは腫瘍細胞の転移に重要な局所因子として着目されており、治療標的としての検討も進んでいるが、腎糸球体障害におけるその意義の検討はまだ十分明らかにはされていない。次年度計画ではエクソソーム分画の意義について検討を追加する予定である。また尿中MRP8の新規バイオマーカーへの応用を目指した計画は検体収集および検出、定量系の確立を目指した初期検討を現在行っている。過去に申請を行った知財強化を目指した計画を予定通り遂行する。
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