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2015 年度 実施状況報告書

慢性腎臓病における創薬ターゲットとしての内因性リガンドMRP8の役割の検討

研究課題

研究課題/領域番号 15K09268
研究機関熊本大学

研究代表者

桑原 孝成  熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (00393356)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード自然炎症 / 糸球体障害 / MRP8 / 細胞間クロストーク
研究実績の概要

平成27年度計画として、半月体形成性腎炎におけるMRP8の役割を検討した。抗GBM抗体陽性GoodPasture症候群から急速進行性糸球体腎炎を呈した患者さんから得られた腎生検標本を用いてMRP8染色を行ったところ、ヒトGBM腎炎の腎糸球体においても半月体形成部分に非常に強いMRP8陽性細胞の集簇が確認された。さらに骨髄細胞特異的MRP8欠損マウスにnephrotoxic serum投与によるGBM腎炎を誘導したところ、骨髄細胞特異的なMRP8の欠損は尿蛋白を減少させることが確認された。糸球体局所でMRP8が発現誘導される機序について培養細胞を用いた検討を行ったところ、メサンギウム細胞培養上清刺激はmacrophageのMRP8産生を強力に誘導、その効果はTLR4阻害薬では一部しか遮断されなかった。
in vivo, in vitroの結果から想定される糸球体内細胞間クロストーク機序の詳細を検討する目的でTHP-1 dual reporter細胞を用い、メサンギウム細胞培養上清(Mes-sup)刺激が単球-macrophageに炎症を誘導する機序について検討した。その結果、Mes-sup刺激は分化誘導前後ともに濃度および時間依存性にNFkB経路を活性化した。またluciferase活性測定によるIRF経路活性化についても同様であったが、長時間刺激によるIRF経路活性増強は分化誘導前の単球状態においてより強く認められた。これらの活性化はいずれもTLR4阻害薬による遮断効果は部分的であった。
以上より、MCはTLR4非依存性に単球-macrophageのERストレスを惹起する可能性が考えられた。現在、Mes-sup中に分泌される細胞間クロストークに重要なターゲット因子について探索中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

in vivo, in vitroの検討ともに、おおむね当初の計画通りに進行している。
具体的には抗GBM抗体陽性GoodPasture症候群から急速進行性糸球体腎炎を呈した患者さんの腎糸球体の半月体形成部分に非常に強いMRP8陽性細胞の集簇が確認できた。
さらに骨髄細胞特異的MRP8欠損マウスを用いた検討により、骨髄細胞特異的なMRP8の欠損はGBM腎炎誘導時に認められるmacrophageのM1 dominanyを抑制、尿蛋白を減少させることが確認された。
in vitroの検討では、メサンギウム細胞培養上清刺激はmacrophageのMRP8産生を強力に誘導、その効果はTLR4阻害薬では一部しか遮断されなかった。想定される糸球体内細胞間クロストーク機序の詳細を検討する目的で行った、レポーター細胞を用いた検討によりメサンギウム細胞培養上清(Mes-sup)刺激は分化誘導前後ともに濃度および時間依存性にNFkB経路を活性化した。またluciferase活性測定によるIRF経路活性化についても同様であったが、長時間刺激によるIRF経路活性増強は分化誘導前の単球状態においてより強く認められた。これらの活性化はいずれもTLR4阻害薬により完全には遮断されなかった。レポーター細胞を用いた炎症誘導機序の経時的推移を鋭敏にモニターできる系を作成できた。この系を用いることで細胞間クロストークにかかわる候補分子のスクリーニングを効率的に進めることが可能になり、次年度計画の遂行に役立つと思われる。
以上より、MCは少なくとも一部はTLR4非依存性に単球-macrophageのERストレスを惹起する可能性が考えられ、新たなターゲット探索は病態解明に有用と思われる。

今後の研究の推進方策

当初の平成28年度計画ではA-ZIP/F-1脂肪萎縮性糖尿病マウスと骨髄細胞特異的MRP8欠損マウスを交配させることで糖尿病性腎症進展にMRP8が果たす役割を検討する予定としていたが、A-ZIP/F-1マウスはもともと妊孕性が低く、遺伝子改変マウスとの交配による産仔が十分に得られていない。そこで計画を一部変更し、前述のレポーター細胞を用いた細胞間クロストーク誘導因子の探索を行うこととする。in vivoの検討で糸球体浸潤macrophage特異的なMRP8陽性率高値を認めることから、メサンギウム細胞から分泌される液性因子はparacrineに作用する機序が想定される。エクソソームは腫瘍細胞の転移に重要な局所因子として着目されており、治療標的としての検討も進んでいるが、腎糸球体障害におけるその意義の検討はまだ十分明らかにはされていない。次年度計画ではエクソソーム分画の意義について検討を追加する予定である。
また尿中MRP8の新規バイオマーカーへの応用を目指した計画は検体収集および検出、定量系の確立を目指した初期検討を現在行っている。過去に申請を行った知財強化を目指した計画を予定通り遂行する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Mild systemic thermal therapy ameliorates renal dysfunction in a rodent model of chronic kidney disease.2016

    • 著者名/発表者名
      Iwashita Y, Kuwabara T, Hayata M, Kakizoe Y, Izumi Y, Iiyama J, Kitamura K, Mukoyama M.
    • 雑誌名

      Am J Physiol Renal Physiol.

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1152/ajprenal.00519.2015.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Transthyretin-related familial amyloidotic polyneuropathy found with abnormal urinalysis at a general health checkup.2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshimura Y, Kuwabara T, Shiraishi N, Kakizoe Y, Tasaki M, Obayashi K, Ando Y, Mukoyama M.
    • 雑誌名

      Nephrology

      巻: 21 ページ: 341-2

    • DOI

      10.1111/nep.12610.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] MicroRNA-26a inhibits TGF-β-induced extracellular matrix expression in podocytes by targeting CTGF and is downregulated in diabetic nephropathy.2015

    • 著者名/発表者名
      Koga K, Yokoi H, Mori K, Kasahara K, Kuwabara T, Imamaki H, Ishii A, Mori KP, Kato Y, Ohno S, Toda N, Saleem MA, Sugawara A, Nakao K, Yanagita M, Mukoyama M.
    • 雑誌名

      Diabetologia

      巻: 58 ページ: 2169-80

    • DOI

      10.1007/s00125-015-3642-4.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Low Serum Neutrophil Gelatinase-associated Lipocalin Level as a Marker of Malnutrition in Maintenance Hemodialysis Patients.2015

    • 著者名/発表者名
      Imamaki H, Ishii A, Yokoi H, Kasahara M, Kuwabara T, Mori KP, Kato Y, Kuwahara T, Satoh M, Nakatani K, Saito Y, Tomosugi N, Sugawara A, Nakao K, Mukoyama M, Yanagita M, Mori K.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 10 ページ: e0132539

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0132539.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Reduction of Tubular Flow Rate as a Mechanism of Oliguria in the Early Phase of Endotoxemia Revealed by Intravital Imaging.2015

    • 著者名/発表者名
      Nakano D, Doi K, Kitamura H, Kuwabara T, Mori K, Mukoyama M, Nishiyama A.
    • 雑誌名

      J Am Soc Nephrol

      巻: 26 ページ: 3035-44

    • DOI

      10.1681/ASN.2014060577.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] An AKI biomarker lipocalin 2 in the blood derives from the kidney in renal injury but from neutrophils in normal and infected conditions.2015

    • 著者名/発表者名
      Kanda J, Mori K, Kawabata H, Kuwabara T, Mori KP, Imamaki H, Kasahara M, Yokoi H, Mizumoto C, Thoennissen NH, Koeffler HP, Barasch J, Takaori-Kondo A, Mukoyama M, Nakao K.
    • 雑誌名

      Clin Exp Nephrol

      巻: 19 ページ: 99-106

    • DOI

      10.1007/s10157-014-0952-7.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 糖尿病マウスにおけるレニン・アンジオテンシン系亢進がMRP8/TLR4シグナルに与える影響およびその機序の検討2015

    • 著者名/発表者名
      桒原孝成、今牧博貴、森 潔、横井秀基, 向山政志
    • 学会等名
      第38回日本高血圧学会総会
    • 発表場所
      愛媛、ひめぎんホール
    • 年月日
      2015-10-10 – 2015-10-10
  • [学会発表] 腎疾患および透析患者における慢性炎症の意義 ~レニン・アンジオテンシン系阻害薬の効果と合わせて~2015

    • 著者名/発表者名
      桒原孝成
    • 学会等名
      第21回日本HDF研究会学術総会
    • 発表場所
      熊本、ホテル日航熊本
    • 年月日
      2015-09-26 – 2015-09-26
    • 招待講演
  • [学会発表] 骨髄細胞特異的MRP8欠損はマクロファージ形質を変化させることで糸球体腎炎を軽減する2015

    • 著者名/発表者名
      桒原孝成、森 潔、横井秀基、笠原正登、柳田素子、向山政志
    • 学会等名
      第58回日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋、名古屋国際会議場
    • 年月日
      2015-06-05 – 2015-06-05

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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