研究課題
前年度までの検討により、糸球体局所炎症に重要な役割を果たす炎症メディエーターMRP8がメサンギウム細胞-マクロファージのクロストークにより誘導され、メサンギウム細胞由来の液性因子のうち、そのうちの少なくとも一部はエクソソームがparacrineに関与している可能性が考えられた。また、糖尿病性腎症、半月体形成性腎炎などを含む糸球体疾患を有する患者尿を用いたこれまでの検討により、MRP8 monomerは血清中では検出されず、尿中特異的に排泄され、アルブミン尿とは異なる意義を有する可能性が示唆されていた。今年度は尿中MRP8 monomerの意義を明らかにするための検討を行った。当初、1D-PAGEでゲル抜きを行い、LC-MS/MSによる検出を試みたが、腎疾患患者では尿中に同程度の分子量物質が豊富に含まれていることなどから、濃縮不十分であり、ターゲットであるMRP8の検出に至らなかった。そこで尿蛋白を豊富に含む腎疾患患者尿で2D-PAGEを可能とする条件検討を行い、限外濾過法+TCA沈殿の変法による濃縮法を確立した。本法で2D-PAGE後にMRP8のウエスタンブロットを行ったところ、major formであるMRP8/14は広いpIで複数のdotとして検出される一方、尿中のみで検出されるMRP8 monomerのpIは限局したspotとして捉えられた。このことから尿中には何らかの特異的修飾を受けたものが排泄されている可能性が想定された。尿中MRP8 monomer特異的に認められる修飾を同定、定量することで病態反映マーカーとしての応用が期待される。
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