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2015 年度 実施状況報告書

リン恒常性の破綻による臓器障害の病態解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K09269
研究機関自治医科大学

研究代表者

椎崎 和弘  自治医科大学, 医学部, 講師 (10423930)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード慢性腎臓病 / ミネラル代謝異常 / 臓器障害 / 慢性炎症
研究実績の概要

リンによる臓器障害の病態や機序を解明するため、野生型マウスを高リン食で飼育することにより腎障害を誘発するモデルを作成した。このモデルでは食餌中のリンが容量依存的に線維化や炎症細胞の浸潤を中心とする腎臓の組織障害がみられた。さらに、これを示唆する様々な分子マーカーの変化も確認することができた。これらの変化は片腎を摘出されたマウスでより顕著であったことより、リンによる腎障害は残存する腎機能(残存する機能ネフロン)あたりの腎臓に対するリン負荷量(尿中リン排泄量)が大きく影響していると考えられた。
リンによる臓器障害を、リンが単独で誘発するのか、もしくはリンがカルシウムと結晶を形成しFetuin-Aなどの蛋白と結合したCalciprotein particle(CPP)と呼ばれるコロイド粒子複合体が誘発するのかを検討するため、上記のマウスモデルにCPP形成抑制物質のひとつであるビスフォスフォネートを投与して、同様に検討した。ビスフォスフォネートによる治療はコントロールと比較して有意に腎臓における病的変化の誘発を抑制した。
さらに腎臓の近位尿細管細胞由来のHK-2細胞を用いたin vitroによる検討で、培養液中のリンの濃度を上げることによる炎症や細胞障害マーカーの上昇が、CPP形成抑制物質であるビスフォスフォネートまたはクエン酸を添加することで有意に抑制された。ビスフォスフォネートやクエン酸の添加した培養液中にはCPPの形成が著明に抑制されていたことも確認した。
これらの結果より、リンによる臓器障害はリンが主要構成成分であるCPPなどの複合体により誘発されることから、リンによる臓器障害の病態や機序として、CPPが細胞障害や自然免疫反応を誘導し、慢性炎症や臓器障害を引き起こす「CPP病原体説」が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の申請前より行っていた予備実験とほぼ同様の結果を再現することができ、多方面からの解析により仮説を確認するための検討もできた。
病態の標的となる化合物の投与や標的遺伝子を改変した動物の作成など、次の段階への準備も進みつつある。

今後の研究の推進方策

平成27年度にリンによる臓器障害の機序として「CPP病原体説」を確認することができたため、今後はCPPがどのように病態に関与しているかを検討する。特に、予備実験でCPPが自然免疫反応の受容体のひとつであるToll-like receptor 4(TLR4)と結合し、腎尿細管細胞や炎症細胞などで特異的なシグナルを伝達することが確認されていることから、CPPのレセプターの候補としてTLR4を標的にした検討を行う。そのため、TLR4欠損およびTLR2欠損、さらにTLR2と4の二重欠損マウスを用いたin vivoでの検討や、これらのマウスの腎臓から尿細管際細胞を採取しin vitroの検討などを計画している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Phosphate-Induced Renal Fibrosis Requires the Prolyl Isomerase Pin12016

    • 著者名/発表者名
      Shen ZJ, Hu J, Shiizaki K, Kuro-O M, Malter JS
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 11(2): ページ: e0150093

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0150093

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Association between Serum Soluble Klotho Levels and Mortality in Chronic Hemodialysis Patients2015

    • 著者名/発表者名
      Otani-Takei N, Masuda T, Akimoto T, Honma S, Watanabe Y, Shiizaki K, Miki T, Kusano E, Asano Y, Kuro-O M, Nagata D
    • 雑誌名

      Int J Endocrinol

      巻: 2015 ページ: 406269

    • DOI

      10.1155/2015/406269

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] CKD-MBDと老化2015

    • 著者名/発表者名
      岩津好隆、椎崎和弘、長田大助、黒尾誠
    • 学会等名
      第60回日本透析医学会学術集会・総会
    • 発表場所
      横浜市
    • 年月日
      2015-06-26
  • [図書] 『腎と透析』第79巻3号 【基礎:成因・病態解明の進歩】 CPPの役割2015

    • 著者名/発表者名
      三浦裕、椎崎和弘、黒須洋、黒尾誠
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      東京医学社
  • [備考] 自治医科大学 分子病態治療研究センター 抗加齢医学研究部

    • URL

      http://www.jichi.ac.jp/laboratory/molecula/genome/index.html

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公開日: 2017-01-06  

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