研究課題/領域番号 |
15K09272
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
長谷川 一宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30424162)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / サーチュイン / NMN / 近位尿細管 / ポドサイト / 尿細管糸球体連関 |
研究実績の概要 |
NAD依存性脱アセチル化酵素Sirt1(サーチュイン)は、カロリー制限で発現が上昇し、長寿や臓器保護に重要な役割を果たす。我々は、腎臓では近位尿細管Sirt1が重要であり、In Vitroの系で細胞保護作用を報告し(長谷川ら、BBRC 2008)、続いて生体意義を解明する為、近位尿細管特異的Sirt1過剰(Transgenic:Tg)発現マウス・(長谷川ら、JBC 2010)・欠損マウス(Condtional Knockout; CKO)を作製した。更に、我々は、高血圧・腎炎・糖尿病等の病態の異なる腎障害をマウスに惹起し、Sirt1発現変化が最も顕著であった糖尿病性腎症に着目した。Sirt1は、通常は近位尿細管と足細胞(ポドサイト、糸球体の構成細胞)の双方に発現するが、糖尿病では、まず近位尿細管Sirt1が低下し、その結果Sirt1由来のニコチン酸代謝産物のNicotinamaide Mono Nucleitide(NMN)の分泌が減少した。NMNの減少で足細胞Sirt1も低下し、Epigenetic制御で本来足細胞に発現していないtight junctionの構成分子のClaudin1の発現が上昇し、足細胞の癒合を引き起こし、蛋白尿が出現する事を報告した(長谷川一宏、 Nature Medicine 2013)。これらはTgマウスで増悪し、CKOマウスで増悪を認めた。この研究で、尿細管から糸球体への尿流と逆行する情報伝達経路(尿細管・糸球体連関と名付けた)を発見した。更に“細胞間連関のメディエーター”として「炎症関連分子」がこれまで注目されてきたが、細胞内ニコチン酸代謝の変化に基づく「細胞代謝産物」(当研究ではNMN)をメディエーターとして初めて同定した。上記の成果について、PECにおけるNMNの動態やNMNによる細胞保護の観点から分子学的なメカニズムに注目し検討している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PECの培養についても着実に行なえており、各種分化マーカーの検討においても、PECマーカー陽性、ポドサイトマーカー陰性と振り分けを正確に行なえている
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今後の研究の推進方策 |
PECにおけるNMNの細胞保護作用の詳細な分子メカニズムを追跡し、同定を進めていく。さらに、尿細管‐PEC連関の有無を明らかにすることで、糖尿病性腎症におけるPECの機能についてもさらに詳細を明らかにしたい
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