研究課題/領域番号 |
15K09273
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
門川 俊明 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (80286484)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腎臓 / 尿細管細胞 / 転写因子 / ES細胞 / micro RNA / EMT |
研究実績の概要 |
micro RNAを介した腎尿細管障害の病態解明と腎線維化の抑制に関しては、研究成果がClinical Experimental Nephrology誌に受理されたため、今年度は、TF-inducible ES細胞バンクを用いた尿細管マスター制御因子の同定と、明らかになった転写因子の導入によるES細胞由来尿細管細胞の分化誘導方法を確立することを主眼に実験を遂行した。 連携研究者の慶應義塾大学医学部システム医学教室洪教授らの作成した網羅的転写因子遺伝子解析データから、腎尿細管細胞分化に関わる転写因子の同定に成功し、ある転写因子(論文投稿前のため、転写因子Xとする)をTF-inducible ES細胞で過剰発現することによりKSP, AQP1, MEGALIN陽性の近位尿細管様細胞への分化誘導に成功した。さらに、転写因子Xを含めた複数の転写因子の合成mRNAを作成し、ヒトES細胞に導入することで培養開始よりわずか9日で近位尿細管様細胞のみならず遠位尿細管様細胞を含めた腎尿細管様細胞の分化誘導に成功した。特に、これら複数の転写因子群を用いた誘導方法では、誘導開始2日目には既に腎前駆細胞のマーカーであるPAX8、LHX1の上昇を認めており、これらは腎前駆細胞としてのポテンシャルを持った細胞群と考えられた。この方法では、高効率に尿細管細胞への分化を促すことができる上に、前駆細胞を含むため今後の移植医療、Drug screeningを含めた臨床グレードへの応用が期待できる。本研究成果を、投稿するために、準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
micro RNAを介した腎尿細管障害の病態解明と腎線維化の抑制に関しては、Clinical Experimental Nephrology誌に受理されたため、今年度は、TF-inducible ES細胞バンクを用いた尿細管マスター制御因子の同定と、明らかになった転写因子の導入によるES細胞由来尿細管細胞の分化誘導方法を確立することを主眼に実験を遂行した。 連携研究者の慶應義塾大学医学部システム医学教室洪教授らの作成した網羅的転写因子遺伝子解析データから、腎尿細管細胞分化に関わる転写因子を同定に成功し、ある転写因子(論文投稿前のため、転写因子Xとする)の過剰発現によりKSP, AQP1, MEGALIN陽性の近位尿細管様細胞への分化誘導に成功した。さらに、転写因子Xを含めた複数の転写因子の合成mRNAをヒトES細胞に導入することで培養開始よりわずか9日で近位尿細管様細胞のみならず遠位尿細管様細胞を含めた腎尿細管様細胞の分化誘導に成功した。アメリカ腎臓学会などで報告をおこない、現在、投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
TF-inducible ES細胞バンクを用いた尿細管細胞の分化誘導方法の確立について、論文投稿を行うとともに、必要な追加実験をおこなう。それとともに、尿細管前駆細胞分化誘導法を用いた発展的な研究に取り組む。具体的には、線維芽細胞に直接合成mRNAを添加することで、ダイレクトリプログラミングをおこすことを検討する。ダイレクトリプログラミング方法が確立できれば、皮膚からの線維芽細胞を採取するだけで、尿細管細胞に分化させることができるため、より臨床応用への可能性が高まる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2つのプロジェクトのうち、1つが、予想より、早く成果が得られ、学会誌に発表できたため、今年度は、TF-inducible ES細胞バンクを用いた尿細管細胞の分化誘導方法の確立に専念した。micro RNAに関しては、消耗品費用がかなりかさむと予想されたが、そのプロジェクトの追加実験などが不要となったために、消耗品費用が少なく抑えられた。一方で、尿細管前駆細胞分化誘導法についての研究は来年度に消耗品費用が必要となるため、次年度に使用額をまわした。
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次年度使用額の使用計画 |
TF-inducible ES細胞バンクを用いた尿細管細胞の分化誘導方法の確立について、論文投稿を行うとともに、必要な追加実験をおこなう。それとともに、尿細管前駆細胞分化誘導法を用いた発展的な研究に取り組む。具体的には、線維芽細胞に直接合成mRNAを添加することで、ダイレクトリプログラミングをおこすことを検討する。ダイレクトリプログラミング方法が確立できれば、皮膚からの線維芽細胞を採取するだけで、尿細管細胞に分化させることができるため、より臨床応用への可能性が高まる。
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