研究課題/領域番号 |
15K09278
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
森山 能仁 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (20439821)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カベオラ / カベオリン-1 / アルブミン尿 / エンドサイトーシス / トランスサイトーシス / エキソサイトーシス / アルブミン透過 |
研究実績の概要 |
アルブミン尿の新たな発現機序として、細胞表面に存在する約50nmの窪み構造であるカベオラが、肺など多くの血管内皮細胞のアルブミン透過に関与し血管内から血管外への漏出に影響を及ぼしている結果から、腎糸球体内皮細胞のカベオラもアルブミン透過に関わりアルブミン尿の一因となっている可能性を考え研究を進めてきた。これまでカベオラを介し、糸球体内皮細胞内にエンドサイトーシスすること、初期エンドソームに取り込まれたのち、ライソソーム、ゴルジ体、小胞体はバイパスすること、アクチンや微小管などの細胞骨格に沿わずに移動することを証明してきた。 平成28年度は、更に細胞内のオルガネラとしてプロテオソームに取り込まれるか確認したところプロテオソームにも取り込まれないことを確認した。またtranswell plateを用いアルブミンが糸球体内皮細胞を介し細胞の反対側にアルブミンが移動するかどうかを調べたところ、アルブミンは経時的に反対側へと排出された。またカベオラ阻害薬(methyl beta cyclodextrin: MBCD)を用いその移動が阻害されるか調べたところ、MBCDによるカベオラ阻害に伴いアルブミンの排泄は障害され,これらの結果より、細胞内へとカベオラを介し進入したアルブミンは細胞骨格上を移動せずエンドソームへと輸送され、その後各オルガネラを経由することなく反対側へ排泄されることが明確になった。またさらに、ピューロマイシン腹腔内投与によるネフローゼ症候群モデルマウスを作成し、MBCDの投与により球体内のカベオラの発現の低下に伴いアルブミン尿が減少する事を証明し、in vitro、in vivoの両方で糸球体内皮細胞のカベオラを介するアルブミンのエンドサイトーシス、トランスサイトーシス、エキソサイトーシスを証明し、アルブミン尿の一因となる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までにカベオラを介し、糸球体内皮細胞内にエンドサイトーシスすること、初期エンドソームに取り込まれたのち、ライソソーム、ゴルジ体、小胞体はバイパスすること、アクチンや微小管などの細胞骨格に沿わずに移動することを証明してきたが、今年度はさらにプロテオソームをバイパスすること、transwell plateを用いエキソサイトーシスを証明し、更にこれらのin vitroの実験結果をもとにin vivoへの実験まで展開することができ、これまでの実験結果をさらに確証づける結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで概ね順調に進展しているため、平成29年度は予定通りにカベオラ経路を阻害することによるアルブミン減少効果をその他の薬剤にて確認し新規薬剤の解明へと進めていくこと、アドリアマイシンによる巣状分節性糸球体硬化症モデルマウスやストレプトゾトシンによる糖尿病性腎症モデルマウスを作成し、カベオラ阻害によるアルブミン尿減少効果がその他の腎炎においても可能であることを確認をすること、カベオラ内のアルブミンの受容体を解明し新規薬剤の発展性につなげていくことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
残高を確認しながら実験を進め、ほぼ当該年度の所要額を使用したが、わずかながら残高が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り、更に腎炎モデルマウスをいくつか作成し、薬剤投与実験を進めていく。
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