研究実績の概要 |
これまでアルブミン尿の新たな発現機序として、腎糸球体内皮細胞の表面に存在する約50nmの窪み構造のカベオラがアルブミンの細胞内透過に関わりアルブミン尿の一因となっている可能性を考え研究を進めてきた。平成27、28年でアルブミンがカベオラを介し、糸球体内皮細胞内にエンドサイトーシスし、その後のトランスサイトーシス、エキソサイトーシスの経路を明確にし、またさらにカベオラの阻害にてピューロマイシン腹腔内投与によるネフローゼ症候群モデルマウスのアルブミンの減少効果が得られることを確認した。 更にこれらの結果を治療に結び付けるために新規薬剤の解明に関する研究を行った。カベオラが細胞内に取り込まれる際にダイナミンが作用しカベオラが細胞膜から切り離され袋構造として細胞内を移動することに着目し、ダイナミンの阻害にてアルブミンの細胞内の取り込みが抑制できるかどうかを調べた。まずダイナミン阻害効果が確実に得られるダイナミンインヒビター(MitMAB, Dynole, Iminodyn)にて糸球体内皮細胞・糸球体上皮細胞へのアルブミンの取り込みが阻害されることを確認した。更に、実際臨床現場で三環系抗うつ薬として使用されている選択的セロトニン再取り込み阻害薬セルトラリンにダイナミン阻害効果があることに着目し、セルトラリンを使用し実験を展開した。 まず、糸球体内皮細胞・上皮細胞に対するセルトラリンの適正投与量を調べるためにLDH放出試験を行い適正投与量を決定した。更に適正投与量内でdose dependentにセルトラリンの投与にてそれぞれの細胞内へのアルブミンの取り込みが阻害されることをwestern blotting法、免疫染色法で確認した。今後さらにtranswells plateを用いた細胞透過の実験、動物実験モデルを使用した実験に展開していく予定である。
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