ADPKDにおける早期診断ならびに除外診断ならびにADPKDの新たな治療薬であるバソプレシン受容体拮抗薬(トルバプタン)の適応決定のため、次世代シークエンスにより、迅速で、精度の高い、ADPKD遺伝子診断法を確立することが本研究の目的である。 昨年度までに、ターゲットDNA濃縮法ならびにロングレンジPCR法を用いた次世代シークエンス法で、PKD1ならびにPKD2遺伝子変異解析を行った。その結果、111人の患者のうち、96人の患者で遺伝子変異を検出した(検出率86.5%)。PKD1変異が79人(82.3%)、PKD2変異が17人(17.7%)と既報とほぼ同様であった。 今年度は、遺伝子変異未検出の15人について、まず次世代シークエンス法で検出が難しいとされるPKD1のExon 1のシークエンスをSanger法を用いて行い、1人のframeshift deletionを検出した。さらに、large deletionを検出するために、Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification(MLPA)法を用いた。その結果、2人にPKD1のExon 3、Exon 5のdeletion、2人にPKD1のlarge deletion(Exon 3~21,Exon 11-46)、1人にPKD2の全エクソンが欠失したlarge deletion(Exon 1~15)が認められた。その結果、遺伝子変異検出率は91.9%(102/111人)まで向上した。このことから、ADPKDにおける遺伝子変異解析では、次世代シークエンスだけでなく、PKD1のExon1のSanger sequencing、MLPAを用いた網羅的な解析が必要であることが示唆された。
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