研究実績の概要 |
【背景と目的】非イオン性造影剤は生体内で安定であり代謝されず,糸球体濾過後尿細管での吸収、分泌がない。このため非イオン性造影剤の血中濃度を測定することにより糸球体濾過量を測定することが可能である。本研究ではダイナミックCT画像により糸球体濾過量(GFR)および腎血漿流量(RPF)を測定する方法論を確立し、敗血症患者の腎血行動態解析、造影剤腎症発症予測および治療指標に役立てることを目的とする。平成27年度は腎移植ドナーを対象として、腎機能正常者でのダイナミックCT画像による方法論を確立することに取りくんだ。【対象と方法】腎移植ドナーは、術前評価として腹部造影CTによる血管評価が必須である。術前腹部造影CT検査に造影剤投与直後から2秒間隔で約20秒間の低線量ダイナミック撮影を追加した検査を行う。腎動脈に関心領域を設定し,作成した時間-濃度曲線(TDC)を入力関数,腎皮質および髄質の画素毎のTDCを作成し,出力関数とする。これらTDCsに対して動脈血中,糸球体および腎組織を独立したコンパートメントとする造影剤の動態モデル解析を適用することによりGFRとRPFを画素ごとおよび左右腎,腎全体に対して算出する。【結果】腎移植ドナー5例の本法左右GFR(mL/min),左右ERPF(mL/min)は各々、症例①67.5/53.7/202.3/241.6,症例②55.9/51.3/282.6/321.3,症例③ 15.8/20.0/146.7/182.9,症例④42.7/51.1/132.7/157.2,症例⑤67.4/72.7/ 217.5/223.0であった。両腎合計GFRとイヌリンクリアランスの間にはy=1.059×-4.425, R20.772,r=0.986と良好な相関を認めた。
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