本研究では、血管周細胞(Pericytes: PCs)特異的に、免疫反応において中心的役割を果たす転写因子である NF-kB シグナルをノックアウトおよび過剰発現させることで、アンジオテンシンII負荷モデルにおける血管周細胞の NF-kB シグナルの役割を解明し、高血圧性心・腎障害の新規治療への応用を目指すことを目的としている。本研究における現時点での研究成果を以下に述べる。 ① PCs マーカーであるCollagen 1a1(Col1a1)遺伝子のプロモーター制御下で タモキシフェン誘導によりCre リコンビナーゼを発現するマウス(Col1a1CreER マウス)と、そのプロモーター活性を調べる目的で、ROSA26-tdtomatoマウスを交配・繁殖に成功した。そして、Col1a1CreER;tdtomatoマウスにタモキシフェンを投与し、Col1a1陽性細胞が、心臓および腎臓の血管周囲に存在することを明らかにした。 ② Col1a1CreER マウスと、NF-kB シグナル伝達系において中心的役割を担うことが知られている IKKb をコンディショなるに過剰発現するマウスと掛け合わせることで、時間的・空間的に PCs 特異的に NF-kB シグナルを過剰発現したマウスの交配・繁殖に成功した。 ③ Col1a1CreER; ikbkb過剰発現マウスにおいて、高血圧性腎障害を惹起するモデルとして確立されているアンジオテンシンII負荷+食塩負荷を用いて、心・腎機能および心・腎組織障害の解析を進め、コントロールマウスに比べ、Col1a1CreER; ikbkb過剰発現マウスで、冠動脈周囲の線維化および冠動脈の血管平滑筋の肥厚が、有意に増悪していることを明らかにした。
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