研究課題
本年度は補足的実験や不足しているデータ採取を行った。インスリンが近位尿細管においてmTORC1を活性化しているかを確かめるためにウエスタンブロットによる確認を行った。ヒト、ラットの腎皮質でインスリンはmTORC1の下流にあるS6Kのリン酸化を促進し、mTORC1阻害剤Rapamycin、mTORC1/2阻害剤PP242によりインスリンの効果は減弱した。このことから腎皮質においてインスリンはmTORC1を活性化していることを確認した。本研究では、これまでにインスリンによる近位尿細管NBCe1機能刺激作用はAkt2およびmTORC2を介している事をヒト、ラットの単離尿細管を使った実験により明らかにした。また、近位尿細管は肝臓と並ぶ糖新生が行われる臓器であるが、それがどのように調節されているかは明らかでなかった。我々はヒト、ラットの単離尿細管においてインスリンが直接的に糖新生を抑制していることを明らかにした。また、インスリンによる近位尿細管糖新生抑制作用がIRS1、Akt2、mTORC1およびmTORC2を介していることを明らかにした。さらに、糖尿病で近位尿細管糖新生が増加していることが知られているが、我々は既にメタボリック症候群、糖尿病で近位尿細管におけるIRS1の発現が減少している事を報告しており、このIRS1の減少によるインスリンの糖新生抑制作用の減弱が糖新生の増加に影響していると考えられた。また、我々はインスリンの近位尿細管ナトリウム輸送刺激作用がメタボリック症候群、糖尿病でも保たれていることを報告しており、近位尿細管における選択的インスリン抵抗性が高血糖、高血圧の病態に関与していると考えられた。
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BioMed Research International
巻: 2017 ページ: 1~9
10.1155/2017/6871081