研究課題/領域番号 |
15K09285
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤乘 嗣泰 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50292917)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖新生 / 糖尿病 / エンドサイトーシス / プロトンポンプ / レニン・アンジオテンシン |
研究実績の概要 |
腎臓は肝臓とともに糖新生を行うことのできる臓器である。特に、絶食時には糖新生の40%を腎臓が担うので、腎臓の糖新生を調節することは糖尿病の新たな治療戦略になり得る。当研究室では腎組織レニン・アンジオテンシン系(RAS)が糖尿病では近位尿細管のアンジオテンシノーゲンのエンドサイトーシスの亢進により活性化され、またエンドサイトーシスに重要な役割を果たすH+-ATPaseの制御により、腎RASが抑制されることを検討している。本研究では腎糖新生がRASにより活性化され、腎臓のH+-ATPaseの抑制により腎組織RASの抑制とともに腎糖新生が抑制され、血糖を改善するか検討することを目的とする。 腎臓での糖新生の律速段階酵素のPhosphoenol pyruvate carboxykinase (PEPCK)やglucose-6-phosphatase(G6Pase)は糖尿病では発現が増加しており、特に24時間絶食下での腎糖新生が亢進していた。また近位尿細管のsodium glucose cotransporter (SGLT2)の発現が増加しており、腎臓細胞質内グルコースおよび血糖が増加してしていた。微量アルブミン尿のみられる糖尿尿性腎症ではアンジオテンシノーゲンとプロレニンの糸球体濾過が亢進し、近位尿細管でエンドサイトーシスされ、腎組織アンジオテンシンIIが増加しているが、アンジオテンシン受容体遮断薬で治療すると糖新生酵素の抑制とともにSGLT2の発現も抑制され、腎細胞質内グルコースと血糖も改善した。近位尿細管のエンドサイトーシスはH+-ATPaseにより亢進し、その阻害薬により腎組織RASの抑制とともに、腎糖新生酵素とSGLT2の発現が抑制され、新たな糖尿病治療標的になり得るので、さらにH+-ATPaseの制御による糖尿病治療の可能性を本研究で継続していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
内科研究棟の移転に伴い、引越しと新しい臨床研究センターでの動物実験の申請などの物理的理由でやや遅れている。動物の飼育室の利用ができない時期が続き、遺伝子改変マウスの購入に資金を残してあるが、今後、新しい研究棟での実験が順調に進行すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
腎臓の近位曲尿細管における糖新生と細胞内小胞のH+-ATPaseとの関連を明らかにして、H+-ATPase阻害薬がなぜ腎臓の糖新生を抑制し血糖を下げるか解明する。 細胞の輸送体や酵素は細胞質の小胞に存在することが多いので、糖新生の酵素PEPCK, G-6-Paseが細胞内小胞に存在するか免疫電顕で検討する。H+-ATPaseは尿細管のapical membraneと細胞内小胞の間を行き来して発現を調節しているが、angiotensin IIはH+-ATPaseをapical membraneから細胞質内にendocytosisして活性を低下させることを私たちは観察してきた。しかし小胞内のpHがどうなっているかは不明であり、pHセンサーにより細胞小胞内のpHを測定して、ARBやH+-ATPase阻害薬の効果を検討する。小胞内のpHが酸性でないとPEPCK, G-6-Paseの活性が低下し,糖新生が抑制されること、SGLT2のmembrane recyclingも抑制され,血糖低下に貢献することなど、機序を細胞レベルで明らかにする。 酸排泄に関与するアンモニア産生と糖新生の関連を明らかにしていく。 レニン受容体はH+-ATPaseのアクセサリサブユニットATP6ap2と相同性があるので,H+-ATPaseのATP6APの遺伝子改変マウスを用いて、糖尿病モデルを作成し、血糖降下作用や腎糖新生への影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
内科研究棟の移転および新しい臨床研究棟での動物飼育がまだ開始できないため、実験がストップしているため残高が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
糖尿病モデル動物はこれから購入予定であり、高価であるので、余剰金はH28年度の実験で使う予定で残してあるので、そのまま基金として回していただけますと幸いです。
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