研究課題
アクアポリン2(AQP2)は腎臓集合管主細胞に発現している水チャネルであり、バソプレシン(VP)刺激により尿細管管腔側膜に集積し、尿濃縮に決定的に重要な役割を持つ。AQP2は複数のVP感受性リン酸化部位を持つ。セリン256(S256)は安定して持続的リン酸化を受けており、刺激によりS269のリン酸化が誘導され、逆にS261は脱リン酸化されるが、それぞれのリン酸化が管腔側膜への集積にどのような役割を持つか明確でない。S256のリン酸化が重要であることは当初より示されたきたが、最近ではこれにS269のリン酸化が加わることで集積が完了し、S261の脱リン酸化は関係が薄いと考えられていた。まず野生型(WT)AQP2において細胞内リン酸化シグナルがどのように推移するか、FK刺激開始直後から時系列で検討したところ、S256、S269シグナルは初期には細胞内で観察され、しばらくして膜集積することが分かった。S261シグナルは常に細胞内優位に観察され、S261脱リン酸化の重要性を示唆した。次にヒトにおける尿崩症原因変異であるP262L-AQP2を作成し検討した。この変異AQP2ではFK刺激によりS269のリン酸化は亢進したが、WTと逆にS261のリン酸化も亢進した。結果としてS256およびS269シグナルがWT-AQP2と逆転し、基底膜側で観察された。さらにS269A-AQP2を作成し検討した。これはS269のリン酸化が起きないモデルである。S256のリン酸化状態は変異により影響されず、FK刺激によりS261は優位に脱リン酸化された。結果としてS256シグナルは管腔側膜上で観察された。以上より、AQP2の管腔側膜集積に関してS261の脱リン酸化は決定的に重要な要因であることが示され、2015年度米国腎臓学会で口頭発表した。
2: おおむね順調に進展している
当該年度の目標である、各リン酸化の意義につきイメージ化することができた。これにより次年度以降の研究ビジョンが明確になった。
AQP2の調節性リン酸化・脱リン酸化につき、各論的理解(それぞれを別個とみなした見方)を超え、連続性のある現象として基本的様態を定義する。マススペクトメトリーを用い、野生型、変異体における相互作用分子を比較解析し、S261の調節性脱リン酸化機構を解明する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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