研究課題
我々はこれまで、(1)慢性腎臓病におけるリンパ管の意義および(2)腹膜透析に関するリンパ管新生の意義につき検討を進めてきた。ともに、線維化にともないTGF-b-VEGF-C(尿細管上皮細胞、腹膜中皮細胞、マクロファージより産生)pathwayによってリンパ管新生が間質に起きることを証明してきた。平成28年度の(1)慢性腎臓病における検討では、TGF-bの下流にあるCTGFとVEGF-C、リンパ管新生に検討して経過を米国腎臓学会で報告した。ヒト閉塞性腎症とマウス片側尿管結紮モデルにおいてVEGF-Cとリンパ管新生は上昇していた。この上昇はCTGF KOマウスにおいて抑制されていた。このメカニズムをさらに検討中であり、直接的にVEGF-C産生調節からリンパ管新生に関わっているという所見も得てきており治療ターゲットとなる可能性を突き止めたい。アデノウイルスを用い慢性腎臓病におけるリンパ管新生促進、抑制実験を行っている。モデルの程度が安定せず結論に至っていないが、望ましい結果がえられつつあり継続して検討中である。(2)腹膜透析に関する検討では、VEGF-D KOマウスを用いてすでに報告しているメチルグリオキサール腹膜障害モデル(Lab Invest 2016)を作成。Wild typeと比較し、リンパ管の直径の差は認めるものの、リンパ管数には経時的にみても顕著な差がないことから本モデルにおいてVEGF-Dの意義は低いと推察した。これら1連の結果を、国際腹膜透析学会 (2017 広州、中国)で報告した。現在、他のメカニズムを含めた検討を続けており、他のmoleculeをターゲットとした抑制実験を実施中である。2017年度に結果がでるように現在進めている。
2: おおむね順調に進展している
本年度の成果を自己評価すると、おおむね順調と判断する。メチルグリオキサール誘導腹膜障害モデルのリンパ管新生メカニズムは、あと一歩で解明できるところまできた。TGF-bの下流のCTGFとリンパ管新生の調節系がよりあきらかとなりつつある。アデノウイルスを用いた抑制実験、刺激実験も継続中であり結果が平成29年度で出てくると考えている。
腹膜透析開始時の腹膜透過性を規定する因子に関しては、動物実験がほぼ終わり解析を進める。培養細胞実験も並行して進めており、最終的にメカニズムを明らかにすることができると考える。腹膜透析におけるVEGF-CとCTGFの関係の検討を完結し論文化へ平成29年度もっていく。慢性腎臓病におけるリンパ管新生の意義につき、遺伝子改変動物を用いて検討を進めた結果につき論文の受理までもっていく。
疾患モデルの動物実験が予定よりも早く効果を観察できたため。
すでに効果を観察した動物実験モデルを使用した機能障害に働くメカニズム解析のため、培養実験、生化学的実験に使用する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
PLoS One
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