研究課題
本研究は『腹膜透析(PD)開始時にみられる腹膜機能障害』や『慢性腎臓病』の病態改善を目指して、リンパ管新生の抑制、或いは促進を基盤技術とした新規治療戦略を確立することを目的とした。『PD開始時腹膜機能障害』の病態解析プロジェクトでは、メチルグリオキサール惹起性腹膜傷害モデルに対し、アデノウィルスベクターsoluble-VEGFR-3-Ig (sVEGFR-3: 生体内のVEGF-C/-DをトラップすることによりVEGFR-3への結合を阻害する)を投与してリンパ管新生の抑制効果について検討した。アデノウィルスsVEGFR-3投与群では、リンパ管新生の抑制を認め、LacZ群に比べ有意な除水機能の改善を認めた。sVEGFR-3はリンパ管新生因子VEGF-C/-Dの発現自体には影響を与えなかった。この結果は、リンパ管新生を抑制することで、除水量を改善させる可能性があることを示すことができLab Investに発表した。『慢性腎臓病』における検討では、腎不全モデルに塩負荷を行い、臓器炎症を評価・検討。高食塩摂取は軟部組織へのNa+蓄積となり、局所に高浸透圧刺激を生じ、転写因子tonicity-responsive enhancer binding protein(TonEBP)を介してマクロファージが浸潤し、炎症へと進展する機序を動物モデルと培養中皮細胞、心筋細胞を用いてMCP-1を介して進展することを証明した。慢性腎不全患者の予後を決める一因子の炎症に、食塩過剰摂取が関与していることを明らかにし、Lab Investに発表した。そして本マウスにおいて、血管新生、リンパ管新生がおきることを示し、治療ターゲットになることまでを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子改変動物を作成していたが、マウスが育たないため一部の実験系が滞った。また、研究代表者が、名古屋大学から愛知医大へ異動して一時研究が滞った。
腎不全マウスに食塩負荷をすることでマクロファージ浸潤から血管、リンパ管新生に繋がることを示した。本マウスの腹膜腹膜透過性亢進を検討し、過剰食塩摂取が腹膜機能亢進に繋がるかを明らかにする。そして、透過性に対して、血管・リンパ管新生を抑えることか、炎症を抑えることのどちらがより有意義かの検討を、モデル動物と培養細胞を用いて検討を続けていく。
遺伝子改変マウスを作成してきたが、なかなか育たず、これを用いたprojectのみ遅れが生じた。そのため、使用期限の延長をお願いした。期限までに、実験を進め成果を出すように努めます。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Lab Invest. 2017 Apr;97(4):432-446
巻: 97 ページ: 432, 446
10.1038/labinvest.2017.4. Epub 2017 Feb 6.