研究課題
1. 腹膜透析(PD)患者のPD排液から作成した中皮細胞初代培養細胞を用いて、長期PDが中皮細胞上の補体制御因子(CReg)の発現を介して、腹腔内の補体系の影響について明らかにするために、経年的にFACSによる解析を進めている。検査開始時と2年後では、CD46、CD55の発現の増強、CD59の発現の低下することがわかったが、現時点ではn=17と少ないため、継続して解析を進める。また、PD治療による腹膜へのCReg発現の影響を網羅的検討は、中皮細胞初代培養細胞では難しいため、cell lineによるmulti plateを用いた同時に多因子の影響判定が可能な実験系の確立を進めている。本研究により、現在のPD液が生体の恒常性維持に対する補体系に与える影響の解明につながると考える。2. PD関連腹膜炎排液中の補体活性化産物による、原因菌の予想や腹膜炎(その後の腹膜傷害を含む)の予後予測ためバイオマーカーへの応用について検討し、一部として感染性腹膜炎中のsC5b-9濃度の計測が培養陰性の腹膜炎予後に役立つ可能性について論文化した。現在も、n数を増やし検討を行うためにサンプルの収集・測定を継続中である。3.真菌感染後の被嚢性腹膜硬化症(EPS)発症機序解明のために、MGO前処置によるZymosanを用いた腸管が一塊となる腹膜炎モデル作成と臨床上問題となる臓側腹膜の評価方法を確立した。更に本モデルへの補体関与としてC5a関与を明らかにし、C5a拮抗剤(AcPepA)によるEPS進展への抑制効果について、国際学会への発表を行った(国際補体ワークショップと国際血液浄化学会(2016年9月))。現在、遺伝性血管性浮腫の治療薬として臨床応用されている抗補体薬の一つC1インヒビターや、C5aの間接的抑制効果も期待できるリコモジュリン等、臨床応用の可能性を考慮した抑制実験を継続中である。
2: おおむね順調に進展している
概要1については、これまでに明らかにした結果について報告してきたが、さらに1年~2年に渡る時間経過に伴う実験結果の解析のために、研究を継続中である。これまでに、腹膜透析導入時から経過を追うにつれ腹膜中皮細胞上の膜補体制御因子の発現が影響を受けている可能性を明らかにするためのサンプルサイズを増やすために採取・解析を継続している。引き続き、経時的にサンプル収集を行い、解析を行っていく。概要2については、成果の一部については論文発表を行い、さらにサンプルサイズを増やし、その後の腹膜への影響も考慮して測定・解析を継続していく。概要3について、昨年についで、C5aを治療のターゲットとしての治療実験を進め、その成果を国際学会で報告した。現在、成果の一部を論文化するための準備を進めている。また、現在ヒトに応用されている抗補体薬による腹膜傷害の改善効果についても検討を継続している。
・今後の推進方策これまでと同様に、腹膜透析が与える腹膜での補体系の働きの異常を明らかにし、補体から見た腹膜傷害の機序の解明を目的とする。将来の目標として、抗補体療法という新たな介入により、腹膜傷害の予防・治療の可能性を模索していくため、in vivoとin vitroの両面で研究を進めていく。・次年度の使用計画概要1については、これまでに明らかにした結果について報告してきたが、さらに1年~2年に渡る時間経過に伴う実験結果の解析のために、研究を継続中である。これまでに、腹膜透析導入時から経過を追うにつれ腹膜中皮細胞上の膜補体制御因子の発現が影響を受けている可能性を明らかにするためのサンプルサイズを増やすために採取・解析を継続している。引き続き、経時的にサンプル収集を行い、解析を行っていく。概要2については、成果の一部については論文発表を行い、さらにサンプルサイズを増やし、その後の腹膜への影響も考慮して測定・解析を継続していく。概要3について、昨年についで、C5aを治療のターゲットとしての治療実験を行い、その成果の一部の論文化を行う。また、現在ヒトに応用されている抗補体薬(C1インヒビター)リコモジュリンによる腹膜傷害の改善効果についての検討を継続している。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 6件)
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