研究課題/領域番号 |
15K09289
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坂田 史子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (20726484)
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研究分担者 |
水野 正司 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (20303638)
鈴木 康弘 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (20584676)
伊藤 恭彦 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (60402632)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性腎不全 / 炎症 / マクロファージ浸潤 / 塩 / TonEBP |
研究実績の概要 |
慢性腎不全患者では、炎症が生命予後や心血管イベントに深く関わると報告されている。我々は、末期腎不全患者の腹膜生検組織において、マクロファージ浸潤(局所炎症)が認められ、腹膜透析の予後不良因子である腹膜透過性亢進と相関していることを2011年に報告した。我々は、慢性腎不全における炎症の発症機序を考えるにあたり、高食塩摂取に着目し検討した。 高食塩摂取によりNaが軟部組織へ蓄積し、局所に高浸透圧刺激を生じることで、転写因子tonicity-responsive enhancer binding protein (TonEBP)を介してマクロファージが浸潤し炎症へと進展する機序を考えた。 マウスに5/6腎摘を行い、腎不全モデルを作製した。1) sham, 2) sham+塩負荷, 3) 5/6腎摘, 4) 5/6腎摘+塩負荷の4群をそれぞれ2週後、4週後に屠殺した。腹壁、心臓、大動脈周囲組織におけるマクロファージ浸潤、TonEBP、MCP-1、Sgk1の動態を中心に比較した。in vitro実験としては、中皮細胞(Met5A)と心筋細胞(HCM)にNaCl刺激を行った。 腎不全・塩負荷群は腎不全単独群と比較して、血圧、血清クレアチニン値、血清IL-6に有意差はなかった。しかし、腎不全・塩負荷群では腹壁、心臓で有意にマクロファージ浸潤がみられ、TonEBP、MCP-1、Sgk1の上昇を確認した。 また、Met5AとHCMにNaCl刺激を行ったところ、TonEBP、MCP-1、Sgk1が誘導された。以上から、腎不全の炎症誘導の一つの機序として、塩分負荷が密接に関連しており、TonEBP-MCP-1 pathwayが考えられた。 上記内容で、第58回 日本腎臓学会学術総会の会長賞を授与された。またThe ASN Kidney Week 2015 Annual Meeting in San Diego, CA においても発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性腎不全における炎症の一機序を、動物実験、細胞実験で実証できた。
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今後の研究の推進方策 |
慢性腎不全における炎症は多面的な機序が考えられるため、マイクロアレイ解析やメタボローム解析もすすめる。遺伝子レベル、代謝物レベルでも解析し、腎不全における塩と炎症の関係について、機序の解明をすすめる。
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