研究課題
慢性腎不全患者では、炎症が生命予後や心血管イベントに深く関わると報告されている。我々は、末期腎不全患者の腹膜生検組織において、マクロファージ浸潤を確認し、これは腹膜透析患者の予後不良因子である腹膜透過性亢進と相関していることを2011年に報告した。我々は、慢性腎不全における炎症の発症機序を考えるにあたり、高塩分負荷に着目し研究を続けている。腎不全マウスに高塩分負荷をすることで、局所浸透圧が上昇し、炎症が惹起される機序を2016年の日本腎臓学会で研究発表した。この炎症は異なるマウス種や異なる腎不全モデルにおいても確認された。利尿剤使用や高塩分負荷を解除することで、組織炎症の軽減を確認できた。組織炎症が観察された心臓、腹壁において、MCP-1染色が陽性となった心筋細胞と腹膜中皮細胞にフォーカスをあててin vitro実験を行った。培地に塩刺激を行うと、高浸透圧刺激によりTonEBP、MCP-1発現は増加し、TonEBP siRNA実験では、MCP-1は抑制されたことから、TonEBP-MCP-1 pathwayを示した。慢性腎不全患者の炎症の惹起には塩分負荷が密接に関与していると証明できた。食塩負荷は高血圧の病態に密接に関連している。本研究では血圧の影響がでにくい4週間モデルを採用し、また血圧の上がりにくい腎不全モデルも作製した。本研究から、高食塩負荷は組織炎症にも影響する可能性があることを証明できた。本研究論文は2016年12月にアクセプトされた。(Laboratory Investigation (2017) 97, 432–446)
2: おおむね順調に進展している
動物実験も細胞実験も、確実に進んでいる。
塩負荷による影響を追及するために、腎不全マウスに塩分制限や利尿剤なども使用して塩抑制実験を行う。慢性腎不全患者の炎症の機序の一つを解明し、1200万人いる慢性腎臓病患者の予後を改善できるように努める。
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Lab Invest
巻: 97(4) ページ: 432-446
10.1038/labinvest.2017.4