研究実績の概要 |
慢性腎臓病モデル動物での血圧・腎機能の制御異常と組織ATRAPの発現調節の関連性の検討を行った.腎不全のモデル動物である片側尿管結紮マウス(腎線維化モデル),5/6腎臓摘出マウス(慢性腎臓病モデル),ストレプトゾシン糖尿病腎症モデルマウスにおいて,高血圧,腎障害(腎機能低下,蛋白尿,腎線維化)の進展に伴う,腎でのATRAPおよびAT1受容体の発現調節を組織ATRAP発現低下が慢性腎臓病病態での高血圧・腎障害に及ぼす影響についての全身性ATRAP欠損マウスを用いての検討を行い,種々の腎障害モデルにおけるATRAP発現制御異常の存在を明らかにした.また,同時に,組織ATRAP発現低下が慢性腎臓病病態での高血圧・腎障害に及ぼす影響についての全身性ATRAP欠損マウスを用いての検討も行っている.研究代表者は,すでに予備的実験により,全身性ATRAP欠損マウスを作製済みである.全身性ATRAP欠損マウスでは通常飼育下では,血圧や腎機能に異常はみられないが,野生型マウスと比較してAng II 刺激による高血圧増悪とその機序としての腎遠位尿細管のナトリウム再吸収チャネル(ENaC)の過剰活性化の関与を明らかにしている(Ohsawa M, Tamura K, et al. Kidney Int 86: 570-581, 2014).そこで,腎不全のモデルである片側尿管結紮(腎線維化モデル),5/6腎臓摘出(慢性腎臓病モデル)およびストレプトゾシン糖尿病腎症モデルにおいて,正常マウスに比べて全身性ATRAP欠損マウスにおける高血圧,腎障害(腎機能低下,蛋白尿,腎線維化)の増悪が認められるか否かについて検討を進めている.これらの検討によって,慢性腎臓病の病態における内在性組織ATRAPの機能的意義が明らかにされると期待される.
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