研究課題
マウスでは慢性腎臓病において高血圧を呈するマウス系統(C57BL/6マウス、高血圧抵抗性マウス)と高血圧抵抗性のマウス系統(129/Svマウス、高血圧易発症マウス)が存在し、機序は不明であった。本研究では、そのマウス系統による違いに、受容体結合性機能制御蛋白(ATRAP)が関与していることを明らかにした。慢性腎臓病での高血圧易発症マウスでは腎臓でのATRAPの発現が低下しており、一方、高血圧抵抗性マウスでは、腎臓でのATRAPの発現が増加することを示した。つまり、腎機能が低下した時に、腎組織でのATRAPが減少することによって、腎組織でのAT1受容体の過剰活性化が亢進することが、慢性腎臓病に合併する高血圧発症の原因であることを明らかにした。次に、慢性腎臓病でも血圧の上がらない高血圧抵抗性マウスを背景に、遺伝子工学的にATRAPを欠損させたATRAPノックアウトマウス(ATRAP-KOマウス)を作製すると、もとは高血圧抵抗性マウスであっても慢性腎臓病の状態では高血圧が発症することを明らかにした。そのメカニズムの解析では、ATRAP-KOマウスでは慢性腎臓病において循環血液量増加依存性の高血圧を呈することを示した。循環血液量の増加は腎機能の低下の程度とは無関係であり、腎でのナトリウムの再吸収の亢進、特定の炎症性サイトカイン(TNF-α)系の発現増加を伴い、腎でのナトリウムの再吸収の亢進は、腎臓尿細管で特異的にナトリウム再吸収を行っている上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)の活性化が関与し、また、特異的TNF-α阻害薬を用いると、ATRAP-KOマウスでの慢性腎臓病による高血圧発症を抑制できることが明らかになった。以上の研究成果によって、慢性腎臓病悪化の主役である高血圧発症の鍵となるメカニズムを解明し、慢性腎臓病克服のための新たな高血圧治療の可能性を提唱することに成功した。
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