研究課題
近年多くの大規模臨床研究の結果から、心血管リスクにミネラルコルチコイド受容体(MR)の活性化が大きく関与していることが明らかとなっており、現在これらの疾患を治療する上でMR 作用メカニズムを解明することは必須となっている。MR のエピゲノムを介した標的遺伝子転写活性化の分子メカニズムやヒストン修飾とDNA 脱メチル化のクロストークについては未だ不明な点が多く、また高血圧との関連も不明な点が多い。我々はFLAG-MRを用いた新規MR相互作用因子スクリーニングの結果得られた因子のうち、C 末端側に典型的なα-ケトグルタル酸依存型ジオキシゲナーゼ活性を有するten-eleven translocation 2(TET2)に注目し、MR転写に与える影響の解析を行うことでMRによるエピゲノム制御機構を明らかにすることとした。まずTET2のknock downのためのshRNAを作成し、TET2 knock down下でのMR活性をLuciferase assayで評価したところ、MR活性には変化が見られなかった。これはLuciferase assayで用いるレポーター遺伝子ベクターにはTET2の標的となるCpG islandが含まれていないためで、TET2はMRとの相互作用においてもCpG islandを要すると考えられた。次にMR stable HEK293細胞においてTET2のknock downを行い、アルドステロン処置によるMR標的遺伝子のSGK1とENaCのmRNA発現をリアルタイムPCRで評価したところ、いずれの標的遺伝子もmRNAレベルでの低下が認められた。このことからTET2はMRの転写活性を促進する転写促進因子であることが示唆された。TET2をMRと共にHEK293細胞に強発現させ、共免疫沈降法により細胞内の相互作用を検討したが、現時点で有意な結合が見られていない。
3: やや遅れている
既にTET2の内因性のMR転写調節に関する影響がreal time PCR法により示されている。ただしMRとTET2の蛋白同士の直接結合の確認が行えていない。
共免疫沈降法でMRとTET2の有意な結合を示す結果が得られていない原因がTET2の発現レベルの不足による可能性を考え外部機関よりTET2発現ベクターの供与を受ける予定である。アデノウィルスを用いた強制発現も検討する。また、スクリーニングの条件に近いFLAG抗体結合ビーズを使用することも予定している。MR table HEK293細胞ではTET2のknock downによりMR標的遺伝子の転写の低下が示されていることから、同細胞での共免疫沈降法施行やアルドステロン処置時間等も検討する。またスクリーニングの性質上考えにくいことではあるが、MRとTET2が直接の強い結合をせずに転写調節を行っている可能性を考えTET2と強調する因子の同定を念頭に研究を進める。
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