研究課題/領域番号 |
15K09300
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
福田 昇 日本大学, 総合科学研究所, 教授 (40267050)
|
研究分担者 |
上野 高浩 日本大学, 医学部, 兼任講師 (40386008)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 高血圧 / 補体 / ジンクフィンガーヌクレアーゼ / 高血圧自然発症ラット |
研究実績の概要 |
我々はSHRの間葉系組織で、補体C3が組織RA系の活性化から高血圧病態形成に関与する機序を明らかにする目的で新しい遺伝子改変技術であるジンクフィンガーヌレアーゼ(ZFN)法でC3遺伝子をノックアウトしたSHR (C3 KO SHR/Izm)を作成した。C3 KO SHRでのC3α鎖の消失と血清CH50の低下を確認した。WKY, SHR, C3 KO SHRの血圧をTail cuff法とテレメトリー法で測定したところ、SHRでは食塩負荷にて血圧が上昇したが、C3 KO SHRでは血圧が上昇せず、SHRの食塩感受性高血圧に補体C3が腎臓内RA系の活性化を介して関与している事が判明した。出生1日目、8週目、20週目の腎臓のHE染色では糸球体傷害係数(GIS)、尿細管傷害係数(TIS)はいずれもSHRでWKYより高く、C3 KO SHRで低下していた。大動脈中膜の脱分化マーカーSM emb染色は生直後から20週齢までSHRで髙発現していたが、C3 KO SHRでは発現が減弱していた。腎髄質のレニン発現はSHRで髙発現し、C3 KO SHRでは発現が減弱していた。腎髄質のEカドヘリン発現はSHRで発現が低下し、C3 KO SHRでは発現が保たれており。SHR腎髄質のRA系活性化は補体C3が腎尿細管上皮を間葉化(EMT)を起こしていることによると考えられた。Real time PCRによる腎髄質のl-カルデスモン、KLF-5、レニン発現はSHRで髙発現で、C3 KO SHRで低下していた。In vitroで糸球体メサンジウム細胞はSHRでオステオポンチンを髙発現し、C3 KO SHRで低下し、補体C3はSHRのメサンジウム細胞を脱分化していると考えられた。以上よりSHR間葉細胞で髙発現している補体C3は高血圧病態に関与していると考えられた
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度内にWKY, SHRおよびC3 KO SHR由来腎糸球体メサンジウム細胞をシービング法にて単離、培養に時間がかかったため、in vitroでの細胞実験は計画通り進んでいない。WKY, SHRおよびC3 KO SHRの塩分負荷での組織傷害、腎髄質免疫染色などのin vivo実験は、C3 KO SHRホモ同士の交配をさせ、実験に供するまで時間がかかる。またテレメトリーでの血圧測定において、プローブが大きいため、4~8週齢のラットでのテレメトリープローブはマウス用を植え込んでおり、その準備に時間がかかった。
|
今後の研究の推進方策 |
WKY/Izm、SHR/IzmおよびC3 KO SHR/Izmの腎皮質腎メサンジウム細胞を単離しても、それぞれのストレインの培養細胞速度に差があるため、実験に供する充分な細胞の確保が不安定なため、今後は増殖の遅いWKYおよびC3 KO SHRは、繰り返しメサンジウム細胞を単離、培養する。また、テレメトリー法による直接血圧測定での植え込みプローブは14週齢以降のラットで使用出来るが、4~6週齢ではマウスのプローブを用いる事とする。今回SHRの塩分感受性血圧上昇に補体C3による腎内RA系亢進が関与していることが明らかになった、そこで今後はC3と塩分感受性に焦点をあて実験を行っていく。
|