研究実績の概要 |
【方法】ラットC3に対するZFN mRNAをSHR受精卵にマイクロインジェクションし、C3 KO SHRを系統樹立し、WKY, SHR, C3 KO SHRに正塩および高塩食で血圧をTail cuff法およびテレメトリー法で測定した。腎臓を取り出し組織学的評価、形質変換マーカーSMemb、レニン、KLF-5、E-カドヘリン発現を評価した。腎内Ang IIはRIAにて測定した。In vitroではWKY, SHR, C3 KO SHRの腎臓よりメサンジウム細胞(MC)を単離培養し、増殖能、形質発現を評価した。 【結果】血圧はTail-cuffでもテレメトリーでもSHRでは高塩食でSBPが上昇し塩分感受性高血圧を示したが、C3 KO SHRでは高塩食でSBPは上昇しなかった。大動脈SMemb発現はSHRで亢進し、C3 KO SHRで抑制されていた。SHRの腎髄質でレニン、KLF-5発現が亢進し、C3 KO SHRでは低下していた。SHRでE-カドヘリン発現が低下し、腎尿細管で上皮間葉化(EMT)が起こっていたが、C3 KO SHRでは抑制されていた。腎内Ang IIはSHRの塩分負荷で増加したが、C3 KO SHRでは抑制されていた。In vitroでSHR由来MC増殖は亢進し、C3 KO SHRで抑制されていた。SHR由来MCでオステオポンチンmRNA発現は亢進、h-caldesmon蛋白発現は低下し、合成型形質を示してしていたが、C3 KO SHRでオステオポンチンmRNA発現は抑制され、h-caldesmon蛋白発現はWKYと同程度であった。 【結論】補体C3はSHRで間葉系組織を合成型形質に変換、また腎尿細管上皮のEMTによる腎内RA系を亢進し、SHRの塩分感受性高血圧に関与している事が示され、SHRの高血圧の発症、病態の一義的因子であると考えられた。
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