研究課題/領域番号 |
15K09301
|
研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
佐々木 成 明治薬科大学, 薬学部, 客員研究員 (60170677)
|
研究分担者 |
田中 靖子 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (20386452)
石橋 賢一 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (80223022)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 水チャネル / バソプレシン / アクアポリン / エクソソーム / 尿濃縮 / バイオマーカー / 水透過性 |
研究実績の概要 |
アクアポリン2(AQP2)は尿濃縮を司る水チャネル蛋白質であり尿中へも排泄され、疾患マーカーとしても期待されている。しかしその詳しい分泌動態や生理的意義は不明である。昨年度までに尿AQP2の約9割が細胞外小胞(EVs)に存在し、共存する蛋白をLC-MS/MSで解析したところ、137個の蛋白質が同定され、そのほとんどが集合管に存在し、Endocytosis pathway蛋白が主体であり、尿AQP2はendocytosis/exosome由来であることが分かった。さらにAQP2が濃縮されている尿EVs(160,000g分画)を用いてstopped-flowにより水透過性を測定したところ、4.75 ± 0.38 × 10-4 cm/sと小さいが、温度依存性が少なく水銀で抑制され、サンプル中のAQP2濃度と相関していた。まとめると、尿AQP2はendocytosis/exosome由来であり、水チャネル機能を保持しているという驚くべき結果であった。本年度は以上の結果を公表するために追加実験などを行い、日本腎臓学会の学会誌に公表することが出来た(Clin Exp Nephrol 2018)。 また、本年度は尿AQP2分泌のモデルとして、従来使用しているAQP2強制発現MDCK細胞に加えて、内因性にAQP2を発現するmpkCCD細胞を使用して分泌動態の調べた。得られた結果はバソプレシン(VP)は転写活性を介して細胞内AQP2量を増やし、それに応じてアピカル液のAQP2量を増加させる。一方ureaによる高浸透圧刺激では、endocytosis/exosome系を刺激してAQP2分泌を増やしている。さらに、この過程において異なる部位のリン酸化が調節に関わっていることを認めた。 今後は、このモデル系を使用し、VP、A-kinase、リン酸化、浸透圧の相互の影響を調べる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エクソソームに存在するAQP2が水チャネル機能を保持しているという予想外の驚くべき結果を得ることが出来た。これはエクソソームに存在する膜蛋白の機能を考える上で大変重要な所見である。この内容が評価され、日本腎臓学会の学会誌(Clin Exp Nephrol 2018)に公表する際には、オープンアクセスの費用は学会負担となり、研究費の節約につながった。 一方、培養細胞モデル系を使ってのAQP2分泌メカニズムの解明は若干遅れている。これは培養細胞の培養条件の最適化に手間取ったことが大きい。基礎検討は終わったので今後は速やかな進展が見込まれる。
|
今後の研究の推進方策 |
1)In vitroではAQP2強制発現細胞において、従来の200,000g画分に加えて17,000g画分に存在するAQP2の分泌動態を明らかにする。また、内因性にAQP2を発現するmpkCCD細胞において、バソプレシンのAQP2分泌に対する効果を3時間まで観察し、増加するAQP2はs256, s261, s269のどのリン酸化が主体かも明らかにする。 2)In vivoでは中枢性尿崩症患者へのバソプレシン投与時の尿AQP2排泄の時間経過を調べ、同時にどのリン酸化がメインであるかを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
結果公表に際してオープンアクセスの為の費用を予定していたが、出版元の日本腎臓学会編集局の判断で学会負担となり、その経費が余ったことが大きな理由である(Clin Exp Nephrol 2018)。 IN vitroの培養細胞系での実験でエクソソームを介する尿中AQP2の分泌機構を時間の単位で精密に解明する予定である。
|