研究課題/領域番号 |
15K09302
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
石橋 賢一 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (80223022)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多発性嚢胞腎 / 質量分析法 / 近位尿細管 / Lithostathine / reg1 / 上皮間葉転換 / 水チャネル / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
近位尿細管特異的多発性嚢胞腎のマウスモデル(AQP11ノックアウトマウス)を使って、ヒト多発性嚢胞腎(常染色体優性遺伝)の進行や発症を抑制する治療薬を開発するのが本研究の目的である(集合管嚢胞の進行をおさえるバソプレシン受容体阻害薬はあるが近位尿細管嚢胞の阻害薬がまだない)。昨年は集合管嚢胞形成の比較からcAMPとアデノシン受容体に注目し、また糖尿病治療薬のナトリウム依存性グルコース輸送体(SGLT2)阻害薬の応用を検討した。 しかしキー分子を推定してこのモデルに応用するよりも、網羅的に発現している蛋白分子を検索することによって、嚢胞腎で増加している分子が嚢胞形成や維持のドライバー分子として新規に同定できる可能性がある。マイクロアレイはすでに発表しているので、2年目の本年度は質量分析法によって、AQP11ノックアウトマウス腎臓で発現量が変化している蛋白を網羅的に検索した。 嚢胞形成直前の生後2週齢マウス腎臓から2044個の蛋白を同定でき、1.5倍以上増加した162個では結合組織関連蛋白やアンジジオテンシノーゲンのほかに、Reg1(Lithostathine)という膵臓増殖因子が10倍に増加しているのが注目された。しかしReg1遺伝子の増加は見られなかったので嚢胞液にReb1蛋白が蓄積していることが示唆された。また上皮間葉転換に関連する蛋白(細胞接着因子)も増加が見られており、嚢胞形成との関連に興味が持たれた。一方、0.8倍以下に低下した蛋白ではミトコンドリア関連のが注目された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量分析法による網羅的解析によって、それまで注目されていなかった増殖因子(Lithostathine=reg1)を同定することができた。これは遺伝子は増加していなかったので、これまでのマイクロアレイでは発見できなかった分子である。嚢胞内に蓄積されている可能性もあって、近位尿細管嚢胞形成に重要な因子である可能性がある。集合管での嚢胞形成に上皮増殖因子(EGF)が関与しているのと類似しており、興味深い。昨年のcAMP:アデノシンのシグナル系とあわせて近位尿細管嚢胞形成の機序に1っ歩近づけた。抑制薬の開発もランダムスクリーニングよりキー分子をターゲットにすることで促進されることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
Reg1蛋白は膵β細胞の再生・増殖因子であることやReg受容体蛋白が細胞膜上に発現していることが報告されているので、腎臓での役割について検討する。とくにreg1と嚢胞形成について培養細胞を用いて検討する。他施設で膵臓Reg1による膵β細胞の再生機序の解明とReg1受容体アゴニストの探索が行われており、これらの先行研究を参考にして腎臓での研究を進める。 またアンジオテンシノーゲン分子の増加もみられていることからレニンーアンジオテンシン系の近位尿細管嚢胞形成への関与をあきらかにする。さらに昨年のcAMP:アデノシンのシグナル系についても同様に培養細胞系を用いて検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
質量分析法による実験を中心に行ったので消耗品の費用が少なくて済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
培養細胞や抗体によるウエスタンブロットを使った確認実験を行う予定なので、抗体購入、培養液などの消耗品がかさむ可能性があるので、消耗品に使用予定。
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備考 |
「業績」のページに論文とリンクがはられている
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