研究課題/領域番号 |
15K09305
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
瓦林 毅 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (90186156)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Abeta oligomer / tau / fyn / NMDA receptor / lipid rafts / synapse |
研究実績の概要 |
1.ひきつづきAbeta発現マウスの大量飼育と基本的データベースの作成を行った.脳分画,synaptosome分画およびsynaptosomeのlipid rafs分画を経時的に作製して,Abeta oligomer, tau,tau oligomer,シナプス関連蛋白および信号伝達系の変化を解析した.Tg2576マウスではAbeta oligomerが6カ月から蓄積し,それとともにシナプス分画にfyn-NMDA受容体系が賦活されること,リン酸化tauおよびリン酸化tauのoligomerが蓄積することが明らかになった.Abeta oligomerのシナプスおよびシナプスのlipid raftsへの蓄積がシナプス信号伝達系の変化とリン酸化tauの蓄積を誘発させることで学習障害を起こすと考えられた. 2. 神経毒性Abeta oligomer の候補のoligomerのマウスへの打ち込みを行った.アルツハイマー病患者の脳分画からdimerおよびtrimerなどを選択してTg2576マウスの右大脳に打ち込みを行った.Abeta oligomerを打ち込んだマウスにおいて打ち込み部位と離れた部位にもAbeta蓄積の亢進が認められ,Abeta oligomerが脳内を伝播する可能性が考えられた. 3.ヒト脳での神経毒性Abeta oligomer 解析を行った.AD 患者およびコントロールの剖検脳を用いてwestern blotによる解析を行い.AD脳では各種のAbeta oligomerが蓄積していることが示された.dimer, trimerおよびtetramerが多く認められた.コントロール脳ではAbeta oligomerは検出できなかった. 4. 神経障害性Abeta oligomer 抗体の作製を開始した.我々のすでに作製した抗体および市販のAbeta oligomer抗体の特異性を検定した. 5.Abeta oligomer測定のためにアルツハイマー病を始めとする認知症患者およびコントロール患者の脳脊髄液の採取を行い,測定に必要な数をそろえつつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析に必要なマウスを確保しつつある.経時的検討にてAbeta oligomerの出現時期,出現によるシナプスの変化を同定した.アルツハイマー病患者脳から神経障害性oligomerの候補を選び,マウスへ脳への打ち込みを開始した.Abeta oligomer特異抗体の作製を開始した.Abeta oligomer測定のための脳脊髄液検体を集めつつある.
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今後の研究の推進方策 |
神経障害性Abeta oligomerの候補をTgマウス脳に打ち込んで,学習障害,脳脊髄液及び脳内Abeta oligomerやシナプスにおける信号伝達系の変化を検討し,最も神経障害の強いAbeta oligomerを特定する. アルツハイマー病患者及びコントロールの脳脊髄液中Abeta oligomerを測定し,アルツハイマー病診断に有用かどうかを判定する.. 作製したAbeta oligomer抗体の特異性を検定し,抗体打ち込みによるAbeta oligomer量やシナプス信号伝達系,学習障害の改善の有無を調べて,神経障害性Abeta oligomerに対する抗体療法の有用性を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に参加している研究助手の人件費が当初の予定より低かったため.
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度に実験に必要な物品費として使用する予定である.
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