研究課題/領域番号 |
15K09306
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
東海林 幹夫 弘前大学, 医学研究科, 教授 (60171021)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Alzheimer病 / 病態修飾薬 / アミロイド / 家族性アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
Alzheimer病(AD)ではAbeta; oligomerとTauopathyによる認知症の発症病態とバイオマーカーの自然経過が明らかにされ,病態修飾薬の開発が熱望されている.本研究では1) 新たな病態修飾薬(Abeta4-10 エピトープを発現する遺伝子組み換え大豆食品による経口免疫)を2) CRND8マウスの行動実験とAbetaおよび関連分画の網羅的定量で検証し,Abeta oligomerの役割と治療介入に有用なマーカーを明らかにして,根本的な治療薬開発を行う.弘前のPSEN1 H163R家系の経過観察研究おこない,国際臨床治験への参入準備を行う事を目的に,平成28年度までに以下の研究を行った. 平成27年度中に確立した,M1蛋白による経口免疫を検討し,Morris水迷路試験で認知機能障害の発症と進行を予防できた.平成28年度は,脳Abetaの測定をELISAでおこない,TBS,SDS,ギ酸抽出に有意差はなかったが,Abeta oligomerの選択的低下を認めた.tauやAP代謝に変化はみられなかった.組織学的には炎症などの副作用は認めず,びまん性老人斑の有意な減少が見られた.抗Abeta抗体が産生され,細胞性免疫も誘発された.以上のことから,M1蛋白による経口免疫は,Alzheimer病発症の予防に有用と考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
M1蛋白による経口免疫の解析はほぼ終了し,平成29年度は常染色体優性遺伝家系の解析を開始できるため.
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今後の研究の推進方策 |
① シナプス機能として,PSD95,Drebrin などのシナプス関連蛋白の定量免疫染色とNissl染色による神経細胞数評価で検討する.Western blotによる検証を行う.Tauopathyの変化をGallyas-Braak神経原線維変化染色,Tau/リン酸化Tau免疫染色も用いて,Abeta老人斑周囲変性神経突起におけるTau蓄積を定量する. ② 弘前AD家系の家系解析,病歴調査の開始 弘前大学神経内科もの忘れ外来に通院する家族性AD (弘前家系;PSEN1 H163R)は江戸時代から続く7世代約241名からなる大家系で,このうちのM家系,T家系,F家系が現在弘前大学に通院している.他の家系構成員の追加情報・病歴を含めて調査を行う.それぞれに家族歴,理学・神経学的検査,ルーチン血液,生理学的検査,X-線学的検査を行った後に,遺伝学的検査の行われていない方に対してはガイドラインに準拠して,書面による同意の後に採血を行いApoE genotype,APP, PSEN1の遺伝学的検索を行う.脳脊髄液および血液Abeta40/42,tau/リン酸化tauのELISAによる測定を行う.NIA/AAによるAD dementia,MCI,preclinical ADの診断基準に準拠した神経心理学的検査をおこなう.頭部MRIは毎年,FDG-PET,アミロイドPETは撮像を希望された例で施行を予定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,予定の測定数より少数で,統計的有意差がでたため,一部の測定を中止したため.
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次年度使用額の使用計画 |
論文作成に当たって,再試験が必要な実験に充当する.
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