研究課題/領域番号 |
15K09307
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
竹内 敦子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00535239)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | クロイツフェルト・ヤコブ病 / プリオン / PMCA / in vitro |
研究実績の概要 |
硬膜移植後のクロイツフェルト・ヤコブ病 (dCJD) には同じ129M/Mの遺伝子型でありながら、病態の異なる全く二つのタイプがある。一方は孤発性CJD (sCJD) と区別できないタイプ、他方はアミロイド斑を伴い非典型的な分子量を持つプラークタイプである。このプラークタイプのdCJD (p-dCJD)は、これまでのマウスを用いた感染実験によりsCJDの129V/Vのタイプ2 (V2プリオン)が感染して生じたタイプであることが明らかとなっている。本研究ではマウスを用いた感染実験を行わずに、プリオンのin virto増幅法の一つであるprotein misfolding cyclic amplification法を用いて、このp-dCJDを迅速に診断できることを見出した。診断法の基本は、seedとなるp-dCJDのプリオン遺伝子型とは異なる129V型のリコンビナントプリオンタンパク質を基質に用いた場合に劇的に増幅されることと、増幅産物の分子量を特異抗体を用いて解析することである。ヒト型マウスを用いた感染実験ではp-dCJDの診断に数年の観察期間を必要としたが、本法では一週間以内に診断が可能となった。今年度はさらに範囲を成長ホルモン剤由来の医原性CJD (hGHCJD)にまで広げ、同じアミロイド斑を伴うタイプについて同様の試験を行った。ボローニャ大学のピエロ・パーチ教授からフランスで報告されたhGHCJD5例の提供を受け、解析したところ5例全てがp-dCJDと全く同様の増幅プロパティを示した。このことから、提供を受けたhGHCJD5例全てがV2プリオン由来であること、またhGHCJDもまたp-dCJD同様本法により迅速に診断可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
硬膜移植の医原性クロイツフェルト・ヤコブ病のin vitro増幅系を用いた診断法の確立は目途がついたため、欧米で多数報告されてきた成長ホルモン製剤による医原性クロイツフェルト・ヤコブ病についても診断の対象を広げ、本法の信頼性について検討を行った。ボローニャ大学のピエロ・パーチ教授より供与していただいた5例についても同様の解析を行い、国際学会にて成果を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
ボローニャ大学から提供された成長ホルモン製剤由来のクロイツフェルト・ヤコブ病症例について、ヒト型マウスを用いた感染実験による確認に着手し、in virto増幅系の信頼性について確認を行っている。同時に、この診断法の信頼性をさらに高めるため、増幅困難なタイプのヒトプリオンの高効率な増幅を目的とした条件検討にも着手していく予定である。
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